いちだんと冷え込んだ朝。土手は霜で真っ白になっていた。 吐く息も白い。なんだか子供みたいにはあはあとそれを楽しむ。
そうして微笑みながらそうしてふっとせつなさが込み上げてくる。
あの日の朝も霜の朝だった。かれこれ四年近くも前の冬の朝のこと。 前日にお大師堂で出会ったお遍路さんが我が家を訪ねて来てくれたのだった。
「修行」という名の托鉢。彼はそれが出来なくてとても苦しんでいた。 私と出会う前夜にはもうお遍路なんかやめてしまいたいと嘆きながら 公衆トイレの中で一夜を過ごしずっと泣いていたのだと話してくれる。
じゃあとにかく練習をしましょう!そう言って我が家に誘ったのだった。 足の悪い姑もぜひ会いたいと言ってくれて我が家を目指して歩いて来る。 わずか30メートルほどの距離だと言うのに姑は思うように歩けなかった。
「おばあちゃん、ゆっくりで良いですよ。大丈夫ですよ」
彼は何度も声をかけながら姑が辿り着くのをずっと待っていてくれた。
そんな出来事があったのが良かったのか、彼は随分と励まされたようだ。 何があってもなんとしても歩き続けなければと思えるようになったと。 数日後、姑と私宛に手紙が届いた。私たちにはとても嬉しい手紙だった。
その後、彼には三度ほど再会することが出来た。 最後に会ったのは今年の夏。笑顔で訪ねて来てくれてどんなに嬉しかったことか。
姑の手を握り締めて「おばあちゃん、ずっと元気でいてね」って言ってくれた。
その時どうして気づいてあげられなかったのだろうと後になり悔やまれた。
まさかそれが最後になるなんて思ってもいなかったから・・・。
その四日後、彼は死んでしまった。自ら命を絶ってしまったのだった。
その事実がどんなにショックだったか。言葉には出来ないけれど。
私のなかでは彼はずっと生き続けている。
今もどこかを歩き続けている気がしてならなかった。
山や海や空や風や。気持ちいいね。生きているよねって声が聞こえてくる。
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