ここ数日、朝は真冬の寒さが続いている。 まさに「春は名のみの風の寒さや」ではあるけれど、 日中の陽射しはありがたくおひさまに手を合わしたいほどだった。
早朝から川仕事に出かけ、帰るなり海苔を天日干しにする。 猫の手も借りたいほどの忙しさにもずいぶんと慣れてきた。
「猫ちゃん欲しいよね」と私がおどけて言うと 猫の嫌いな夫も「野良猫でもいないかな」なんて笑い合う。
微笑み合えば疲れも忘れほっとしあわせな気分になれる。
午後からは出荷の準備などがありゆっくりと休めなかったけれど。 私は忙しいのが好きだなと思う。なんか張り合いがあって良いな。
干してある海苔を取り入れる前にちらっと散歩に出掛ける。 北風が強くって土手に上がると身震いするほど寒かったけれど。 くんくんとあんずがおしえてくれたのは蓬の緑だった。 雀色に染まっていた土手にもそうして少しずつ緑が萌え始めている。 もう少ししたら土筆の坊やたちも頭を出してくれるかもしれない。 そう思うとなんだかわくわくとしてきて寒さも気にならなくなった。
お大師堂に着いてびっくり。二週間ほど前に再会していたお遍路さんがいた。 山梨出身のMさんとはすっかり顔なじみの仲良しさんだった。 今回は逆打ちで土佐久礼まで行ったものの風邪で熱が出てしまったとのこと。 ゆっくりと身体を休める場所もなく必死の思いで来た道を戻って来たそうだ。
どんなにかしんどい思いをしたことだろう。 それでも我が家を目指すように戻って来てくれた事が嬉しかった。
職業遍路さんにとってお大師堂が「我が家」なのかもしれない。 唯一くつろげる場所なのかもしれなかった。
そんなMさんを労わることしか出来なかったけれど 風邪薬や夕食やいろんなことを考えたのだけれど 休ませてもらえるだけで良いのだと言ってきかないMさんだった。
自分に出来ることは。ほんとうにちっぽけなことばかり。
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