昨夜のうちに雨があがり青空の朝になった。 日中の気温もずいぶんと高くなりすっかり春の陽気となる。 風の強い一日だったけれどそれも嬉しい春風に思える。
姑さんが寝たきりになってひと月が過ぎた。 大好きな畑仕事が出来なくなってどんなにか辛いことだろう。 せめて草引きでもと思いながら何もしてあげられずにいる。 心苦しさもあるけれど畑の野菜たちが可哀相にも思えてきた。
白菜は菜の花を咲かせ始め、大根はトウが立ち始めた。 唯一ほうれん草だけは見事に成長して今がまさに収穫期だった。 丹精込めて野菜を作り近くの地場産市場に出荷するのが姑の楽しみ。 特にほうれん草には力を入れていてその量はハンパではなかった。
なんとかしなければ。その思いが日に日に込み上げてくる。 義妹と相談の結果、少しでも市場へ出荷してみようと言うことになる。
収穫は私。袋詰めは義妹と姪っ子が手伝ってくれることになった。 川仕事を終えてからさっそく畑に行き青々としたほうれん草を収穫する。 少し湿った土の匂い。昨日の雨を恵みに生き生きと伸びているほうれん草。
愛しいものだなと思った。こんな愛しさを感じたのは初めてではないだろうか。
そうして10束のほうれん草が出来る。 一束百円だけれど、その価値は決して値段ではないのだなと思った。
姑さんの思いがたくさんこもっているほうれん草。
売れ残っても良いのだ。一人でも美味しいと言って食べてくれる人がいてくれたら。
姑さんもほうれん草もすごく嬉しいと思うのだ。
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