晴れのちくもり。雨が近いのか湿気をおびた南風が強くなる。 その風がとても気持ち良くて土手で鳥のように手を広げてみた。
あんずの様子を見ながら大橋のたもとの休憩所まで歩いてみる。 よっこらしょ、どっこいしょとよろよろしながらも一生懸命に歩いてくれた。
その三時間ほど前に休憩所の東屋で横になっているお遍路さんを見かけていた。 もしかしたらまだ居るような気がして、なんとなく足を向けてしまったのだった。
私と同じくらいの歳に見えるお遍路さん。日焼けして真っ黒になっている。 暑さにすっかり参ってしまって休憩しているうちに眠ってしまったのだそうだ。
今夜はそのまま東屋で野宿をすると言うので、お節介かなと思ったのだけれど お大師堂で泊まれることをおしえてあげた。でもそれは知っていたそうだ。 人それぞれでやはり自分の気に入った場所でくつろぐのが一番なのだろう。
やっぱり私はお節介だなって心の中で苦笑いをしそうになったその時、 そのお遍路さんがにっこりと微笑みながら「ありがとうございました」って 言ってくれてすごくすごく嬉しくなった。心の中がすぅっと気持ちよくなった。
よけいなお世話だなって思ってもそんなふうにちゃんと言えるってすごいなって思う。 「いや、ここが良いんですよ」って突き放されていたらすごく悲しかったと思うのだ。
ほんとうにささやかな出会いだったけれど、すごく大切なことを教わった気がする。
行きはよいよい帰りもよいよいで南風に背中を押されるように家に帰った。 「母さん、今日はめっちゃしんどいわん」あんずはふらふらになっていたけれど
「あんちゃん、今日はありがとうの記念日よ」なんて頭をなでる母であった。
|