道端のあちらこちらにコスモスの花が見られるようになった。 お遍路さんがひとりふたりと通り過ぎて行く遍路道にも。
秋色の風のなか鈴の音がひびく。ちりんちりんと鈴虫のように。 呼び止めることも声さえもかけられないけれど そっと手を合わせながら旅の無事を祈り続けている。
こころが必死になって平穏を保とうとしている時がある。 どうしようもなく苛立ってしまう時が誰にだってあるのではないだろうか。 ぶつかればぶつかる。半沢直樹ではないけれど倍返しの時だってある。
すごくすごく逃げ出したい気持ちになってしまって ああ嫌だなって思った。こんなはずではなかったのになんて思ったり。 いったい何が原因なのだろうと考えても何も思いつくことがなかった。
「いらいら虫よ飛んで行け」って何度も叫んでしまったりする。 いらいら虫は眉間にしわを寄せてぷんぷんおならをしている虫なのかな。 それはやっぱり臭いし、しわはそのまま眉間に残ってしわくちゃばばあになるよ。
ああ嫌だ嫌だ。どうせしわなら笑いじわのほうがずっと良いに決まってる。 笑顔の可愛いおばあちゃんになるんだ。いつもにこにこしているおばあちゃん。
結局、逃げるように職場を後にしてしまった。
「ありがとうね」って母が私を追いかけるように言ってくれる。
あら不思議、いらいら虫はいつのまにかどこかにすっ飛んで行ったようだ。
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