寒さも和らぎ日中はまるで春のような暖かさになった。 庭のかたすみに野すみれの花が咲いているのを見つけてほっと嬉しく思う。 コンクリートで固められた庭だと言うのに、その隙間からそれは咲く。 野に咲くすみれ、かつて土手から種が風に吹かれて根付いたものだと思う。 雑草だと始末してしまわずにずっと見守っていてほんとうに良かった。
昨日の早朝のこと、息子からメールがありお嫁さんの陣痛が始まったとのこと。 とるものもとりあえずすぐに病院へ駆けつけたけれど初産は時間がかかるものだった。 お嫁さんのご両親と息子に後を頼み一度は帰宅したもののなんとも落ち着かない。
川仕事どころではなく自宅待機をしながら息子からの連絡を待っていた。 お昼過ぎになって分娩室に入ったと知らせが来る。また大急ぎで駆けつけた。
けれどもちょうど同じ時間に産気づいた妊婦さんがもうひとりいて お嫁さんはまた病室に帰されてしまっていた。陣痛がすごく今にも産まれそう。 大丈夫かしら、このまま病室で産まれてしまうのではないかとはらはらするばかり。 陣痛の痛みもピークに達し、うめき声をあげほんとうに辛そうだった。
病棟に産声がひびく。生まれたね、やっと分娩室に行けるよと思ったのだけれど 助産師さんが来てくれてもうしばらく待っていてねと言うからみんなでパニックになった。
大丈夫だと思っていてもこんなに緊張したことはかつてなかったと思うほど。 特に初孫のお嫁さんのご両親はどんなにか不安だったことだろう。
午後4時過ぎまで待ってやっと分娩室に入ることが出来た。 そうして午後5時30分、辛い陣痛を乗り越えて元気な産声があたりにひびく。
3020g元気な男の子が誕生した。なんとも感動的な一瞬であった。
病院からの帰り道、夜空にはぽっかりと満月が浮かびきらきらと輝いていた。 お月様からさずかった命なのかもしれないねと夫ふたりで微笑みあう。
どうかすくすくと元気に育ってくれますように。月の光に手を合わせながら祈った。
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