ひんやりと肌寒い朝。日中も涼しく過ごし易い一日だった。
風に揺れる秋桜。まだ咲き始めたばかりで満開が楽しみである。
今日から少しずつ日常のことをと思っていたけれど
そうは問屋が卸さず葬儀の後始末に追われていた。
頂いたお香典の整理が大変でその数は二百人に近かった。
母がそれだけ慕われていたことはもちろんのことだが
義父の人望の厚さが招いた結果でもあるだろう。
お香典の有難さ。おかげで葬儀費用に充てることが出来そうだ。
朝から弔問客が絶えなかった。葬儀に来られなかった人の多いこと。
聞けば村の無線放送に不備があり訃報を知らずにいたのだそうだ。
高齢者も多く町の葬儀場まで来られなかった人もいたようだ。
工場の事務仕事も忙しく2時間の残業になる。
気がつけば朝から母にお線香もあげていなかった。
母のことだから怒りはしないだろうが私の良心が痛む。
帰り際に遺影に手を合わせて「ごめんね」と声を掛ける。
「早く帰って家のことをしなさいや」と声が聴こえたような気がした。
それが母の最後の言葉だったことを思い出す。
もう二度と聞くことは出来ないのだ。
あれこれと現実が押し寄せて来ても私は未だ悲しんではいなかった。
もしかしたら一生悲しまずにいるかもしれない。
母もそれを望んでいるのではないだろうか。

遅くなったのでスーパーのお惣菜を何種類か買って帰る。
娘も残業らしくまだ帰って来ていなかった。
洗濯物をたたみながらぼんやりとこの三日間のことを思い出していた。
やはり夢としか思えない。いったいいつ目が覚めるのだろう。
夕食時、あやちゃんに訳を話し「手抜きでごめんね」と言ったが
笑顔は見れなかった。無視されたように感じずにいられない。
あやちゃんは結局、お通夜にもお葬式にも出てはくれなかった。
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