小糠雨降る一日。気温はさほど低くはなかったが肌寒く感じた。
彼岸の入り。あちら側とこちら側に真っ二つに分かれてしまいそうだ。
正しい日本語なのかは定かではないが私はよく「寒の別れ」と表現する。
「暑さ寒さも彼岸まで」と昔の人はよく言ったものだ。
夫72歳、母が生きていれば86歳の誕生日である。
夫と出会った若き日に「運命」を感じたが果たしてどうなのだろう。
苦労も多かったが今のこの幸せを噛みしめずにはいられない。
45年目の春である。共に白髪の生えるまではとっくに過ぎた。
あと何年添え遂げられるのだろうとそればかり考えている。
「俺より先に死ぬなよ」残された私はどうやって生きていけばいいのだろう。

朝のうちに髪を切りに行きさっぱりと心地よくなった。
私にはいつも2センチの憂鬱があるようだ。
生きている証なのだろう。2ヶ月で2センチ髪が伸びる。
義父から何度も着信がある。どうやら一人で仕事をしていたようだ。
昨日二日酔いでサボってしまったのでよほど心苦しかったのだろう。
逐一報告してくるのでまたまた子供みたいだと可笑しくなる。
かなり仕事が捗ったようで明日が楽しみであった。
夕方、めいちゃんが食卓の周りに飾り付けをしてくれる。
折り紙で作った花や風船まで飾ってくれ夫のなんと喜んだこと。
プレゼントと手紙まで渡してくれて夫は涙ぐんでいた。
私はふと不安になった。もしかしたら最後の誕生日ではないかと。
いやいやそんなはずはないと振り払うように思い直す。
いつも優しいめいちゃんの成長した姿だったのだろう。
大好きなおじいちゃんのために心を尽くしてくれたのだと思う。
夫も母も彼岸に生まれ春に祝福されたことだろう。
桜の花が咲き嬰児の瞳に鮮やかに映ったに違いない。
母には今年の桜を見せてあげることが出来なかったが
夫よ。どうかどうか長生きをして下さい。
私より先に逝かないで下さい。
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