ゆらゆら日記
風に吹かれてゆらゆらと気の向くままに生きていきたいもんです。

2025年07月11日(金) 秘密

明け方まで強い雨が降っていたが日中は殆ど降らず。

気温も30℃程で猛暑は和らいでいた。

しかし変わらぬ蒸し暑さで戻り梅雨らしい一日となる。


朝の山道を行けばねむの木の花が沢山落ちていた。

すでにその色は茶色くなりまるで「死骸」のようである。

天使のように美しい花でも最後は憐れなものであった。


山里の民家に差し掛かれば一輪だけ残っていた向日葵が

おそらく雨に打たれたのだろう今にも折れそうである。

母の友人の姿を探したが今日も会うことは出来なかった。

元気にしているだろうかそればかりが気に掛かる。


義父は高知市内で研修があり早朝から出掛けていた。

留守となると気が緩み同僚ものんびりモードである。

9時になっても動こうともしないのでつい声を荒げてしまった。

仕事は消防車の点検のみ。ゆるりで良いがサボるわけにはいかない。

火事など滅多に無い平和な村だけに消防車の走行距離は極めて少なかった。

それでも公用車なので点検は必ず行わなければならない。


午後は閑古鳥が鳴き同僚は増々のんびりモードになっていた。

私は市内の司法書士事務所や職安に行かねばならず早目に退社する。

会社の新しい登記が完了し謄本の役員蘭に私の名前が記されていた。

とうとうここまで来たかと会社に骨を埋める覚悟が出来る。

義父にもしものことがあっても私は役員として残らねばならない。


職安では雇用保険の受給取り消しの手続きをした。

これでもう失業しても保険を貰うことは出来ない。

労働保険も同じと知り同じ庁舎内の労働基準局にも行く。

役員となればもう労災保険も適用外となるのだそうだ。

これまで長年に渡り「労働者」と優遇されていたことを全て失ったのだ。


夫に話すべきではないかと悩む。しかし打ち明けることが出来なかった。

いざとなった時には小言では済まない大きな秘密となる。

責任も今まで以上に強くなりなんとしても会社を守らねばならない。

もう引き返せないのだ。ならば立ち向かって行くしかないと思う。


4時に帰宅。「銭形平次」を見ようと茶の間に行ったら

昨日が最終回だったらしく「子連れ狼」になっていた。

再々放送のようで見覚えがあったが夫とラストまで見る。


夕飯に「鰆の塩焼き」をしていたら夫が塩が薄いと文句を云う。

おまけに「俺は鯵の方が好きだ」と宣い少しむっとした。

滅多に文句を云うような人ではないので何かを察したのではと思う。

夫婦の間で秘密を持ってはならない。何と後ろめたいことだろうか。


若い頃には秘密が沢山あった。それも若気の至りだろう。

あれこれと書き物をするのも夫は快くは思っていなかった。

「何を書いても良いが本名で書くな」と責められた挙句に

ペンネームを考えなければいけなかった。

私は本名が好きでペンネームなど思ってもいなかったのだが

仕方なく「詩織」と云う名であれこれと書くことを始めたのだった。

今思えば「栞」にすれば良かったと思うがもう後には引けない。

友人達も近所の人までも私の名を知っていてもう逃げも隠れも出来なかった。

今更改名などどうして出来よう。死ぬまで「詩織」を貫くしかない。


この日記も夫には秘密であった。

私が死んでも永遠に秘密で在り続けるだろう。

そう思うと何とも儚い行為であるがそれが私の「道」なのだと思う。

「ごめんなさい」ではなく「ありがとう」と夫に告げて逝きたい。


※以下今朝の詩

    
      記憶

 空から記憶が降って来る
 ざあざあと音を立てながら
 心をかき乱そうとしている

 ひとつを選ぶのは難しい
 そのひとつが次の記憶を
 伴ない連れて激しく降る

 傘を失くしたのは遠い昔
 壊れてしまっていたから
 もう探そうとはしなかったのだ

 空は戸惑うこともせず
 まるで決心をしたかのように
 記憶を降らせ続けようとする

 私はずぶ濡れになってしまう
 生き永らえて来たことさえも
 記憶として受け止めねばならない





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