予報通りに昨日の朝より気温が低くなる。
とうとう暖房のお世話になった朝であった。
そんな肌寒さもつかの間のことで日中は随分と暖かい。
柔らかな陽射しの何と有難いことだろう。
朝の山道から峠道を越え山里の人家が見え始めると
ピラカンサスの赤い実がとても鮮やかである。
つい先日まではオレンジ色だったのが一気に赤くなったようだ。
晩秋から初冬へと変わる季節を知らせてくれたのだろう。
「赤い鳥小鳥なぜなぜ赤い 赤い実を食べた」
ついそんな歌を口ずさみながら職場へと向かった。

今朝も義父の姿が見えず朝刊もポストにそのままだった。
一瞬また二日酔いかと思ったが居室から物音が聞こえている。
心配することはないだろうとお昼まで声も掛けずにいた。
すると「ドジャースが負けた」と云ってやっと姿を見せた。
ゆっくりと野球観戦をしていたのだろう微笑ましい事である。
午後はまるで火が点いたように大型車の修理を始めた。
何と頼もしいことだろう。惚れ惚れとするような姿である。
ディーラーでもあまり気が進まない難解な修理なのだそうだ。
義父の手に掛かると直らない車はないと云っても過言ではない。
今日は自賠責保険と重量税の精算があったが
資金はゼロ。その上に一円も入金がなかった。
何と全てのお客さんが立替金である。
請求書は出しているが一向に入金がないのであった。
けれどもお客さんを恨んではならない。
立て替える余裕のない我が社が悪いのだと思う。
義父に助けて貰うことも考えたが苦労をもぎ取るようで心苦しい。
ここは自分の力で乗り越えるしかないと思った。
善は急げである。平田町の銀行まで車を走らせていた。
銀行には「奥の手」があった。もうこそ最後の手段である。
仕事はいくらでもあるのだ。きっと挽回出来ると信じて止まない。
同僚とも話したのだが忙しいばかりでどうして資金繰りが困難なのか。
例えばオイル交換のお客さんが「財布を忘れた」と云う。
タイヤ交換のお客さんは「今はお金が無い」と云う。
いくら田舎でもあまりにも非常識ではないかと思うのだ。
「ツケ」が当たり前になっているこの現状を変えなければならない。
車検もしかりである。予め予算を組んでから予約して欲しい。
その予算も無いのなら車検を依頼してはいけないと思う。
すったもんだと愚痴るがここで愚痴らなければ捌け口がない。
私はもうやけくそである。矢でも鉄砲でも持って来いと思う。
随分と追い詰められているが何としても会社を守りたい。
どうかどうか明日の風が優しく爽やかでありますように。
※以下今朝の詩(昭和シリーズより)
リクエスト
お昼休みなると放送室へ行く 皆が楽しみにしている リクエストの時間であった
放送室の前には箱が置いてあり 毎日たくさんのリクエストがある
レコードを買う予算などなく 部員たちの持ち寄りであった ラジオを録音したカセットもある DJは私の担当であったが それが楽しくてならなかった
荒井由実吉田拓郎NSPなど 時には洋楽を流す時もある
恋をしている人 失恋をしたばかりの人 それぞれの想いを曲に託す
教育実習の西尾先生は 毎日のように放送室に来ていた そうして私にちょっかいを出す
放送室からは海が見える 潮風に吹かれるように好きな曲が流れた
#詩 「リクエスト」
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