あの日から
あの一夜を思い出そうとしている。
きっかけは覚えている。
だけど、切れ切れに浮かぶばかりで、順を追って思い出せない。
PCを起動していても、メーラーを閉じている時が多い。
彼からのメールを見つけたのは、何時間後だったのか。
彼の腹部を指で押し
ここに包丁を突きつけたらいいの?
泣き叫んだらいいの?
彼が恐れたのは、私が無表情で、それどころか笑みさえ浮かべ
冗談を口にしたこと。
ひとごとのように、淡々と話していたこと。
最初のうちだけだったけれど。
そのうち何も考えられなくなり、ひとつだけ頭に浮かんだ。
息子の顔を見に帰る。
一緒に大阪で生活しようね。
生活?そんなこと言ってないよ。
息子の顔を見たいだけ。
帰るだけだよ。
適当に身の回りのものをバッグに入れて、部屋を出ようとする私と
引き止める彼。
渾身の力でふりほどこうとして、抑え込まれる私。
バッグを取り上げられそうになり、手放したんだっけ。
いらないや。
欲しかったらあげる。
言いながら笑った気がする。
2005年12月02日(金)
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