2005年01月04日(火) |
不定期連載:「イシドロよ、大志を抱け!_13 ヴリタニス編 お勉強」 |
‥‥‥年明けになっても、俺ら一行はヴリタニスから行くも帰るも出来なかった。聖アルビオンとやらから実質三ヶ月くらいしか経ってないハズなのに、感覚的に半年以上ここに居るような気がする。 ガッツの兄ちゃんは売‥(痛え、セルピコに小突かれた)いや、路銀稼ぎのバイトから帰ってこねえ。騒ぐ酔っぱらい共は、セルピコが全部黙らせたからまあいいんだけどよ‥。 奴の矛先がこっちに向かってきやがった。奴独特の目が笑ってねえ、穏やかな微笑みをうかべて「読み書きの勉強をしましょうね」と言いやがる。 手には「タイタス・アンドロニカス」 。俺はまだ「ごんぎつね」も読んでねえのに、しょっぱなからそんなエグイ内容の本持ってこなくたっていいだろ!?
そしたらセルピコの野郎、「これから剣士になると言う方が、これくらいでビビってどうします?」とあくまでもにこやかだ。怖えよ、おい。 くそ、こうなったら俺にも考えがあるぜ。この本だったらいいぜ。俺は夢野久作著「瓶詰地獄」 をセルピコの前に突き出した。珍しく、さっと顔色が変わるセルピコ。 「いけませんねえ、まだシェークスピアも読んでいないおこちゃまがこんな本を読んでは。まず正統派文学から入りなさい。発音、言い回し、韻の踏み方もシェークスピアだったら完璧です」
なんだよう!夢野久作だって、優雅華麗でお耽美な語り口じゃねえか!?グロイのはともかく。
「ともかく内容が早すぎます!きちんとした恋愛出来る様になったらお読みなさい」
ちっ、そういうお前はきちんとした恋愛してんのかよ?大人ならちゃんと指南してくれよな?
「まず、その前にお勉強なさい。教養が無いとろくな恋愛も出来ませんよ?女性に馬鹿にされていいんですか?」
何冷や汗かいてやがる?セルピコの野郎。どうして「タイタス・アンドロニカス」が良くて、「瓶詰地獄」がまずいんだよ?きちんと説明しやがれ!ついでに女体の神秘を教えやがれ!
「おこちゃまのうちはきちんと避妊なさ〜いっ!」
の言葉と共に、セルピコに思い切りひっぱたかれた。
‥‥‥‥‥なんだかんだ揉めたあげく、教本はダンテの「神曲ラテン語版」になってしまった。ラテン語なんて庶民はほとんど使わなねえんだけど‥。次の教本はエラスムスの「痴愚神礼賛」だそうだ。
「基礎の数学や天文学、神学、哲学も教しえて差し上げます」
セルピコはノリノリだ。 ガッツの兄ちゃんはバイトからまだ帰ってこない。 ファルネーちゃんに、セルピコが教えてくれる本の内容、前もって教えてくれと聞いたら、ファルネーちゃんも解ったような解らない様な顔だった。「瓶詰地獄」知ってるか?と聞いてもねーちゃんは「?」だった。 ファルネーちゃんやキャスカの姉ちゃん、シールケ達は、宿屋の女将さんに料理を教わっていた。 セルピコは俺に付きっきりでべんきょーを教えてくれた。
俺、腐れムーミン・トロールと戦ってる方が良いかも(;;)。
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