ぶらんこ
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大きな漁船が停泊されている。 深緑色の波がたぷたぷと揺れている。波の上にはおがくずのようなゴミと一緒に海草が浮いている。 防波堤と縄には、緑色をしたコケのようなものと、ギザギザとした古い貝がびっしり付着している。 いつもの光景だ。 ふと見ると、コンクリートの塊が、ほんの少しだけ海面に浮いたままどこからか流れ着いた。 太い縄で縛られているようだが、壊れた防波堤の一部なのかもしれない。
どやどやと漁船から兄貴たちが降りてくる。 明るい表情から、漁がうまく行ったのだろう、と想像する。
姉がやってくる。 「全部で15,800円だったからね」と言う。この前、皆で外食したときのものだ。 わたしはお財布から1万円札を取り出し彼女へ渡した。 5800円も渡すべきだったかな・・と少し後悔したが、姉は他の兄弟姉妹にも同じように声をかけていたので、安心する。
コンクリートの塊が上へ下へ浮いたり沈んだりしている。 それをじぃっと眺めていると、なぜか、海に飛び込まなくては・・・潜らなくては・・・という気持ちになる。
姉が戻ってきて、「清算してお釣りを渡すからね!」と言う。 わたしは彼女に「ちょっと潜ってくるよ」と言う。 姉は、今?というような表情をしていたが、特に止める様子はない。
わたしは、とにかく飛び込んで潜ってみなければ何も見つからないからな。と、思い、わくわくしてくる。 底の部分がどうなっているのか、既に見えるような気さえしてくる。
・・・・
宇宙船に乗って旅を続けている。 乗り換えのためだろうか、ターミナルに来ている。 まだ時間があるから、と、そこらを散策することになった。 人の波を縫うように、ただ見て歩く。
と、男の子と女の子に声をかけられた。 男の子のほうには見覚えはなかったが、女の子には妙な懐かしさを感じる。 褐色の肌にブロンドの巻き毛。 誰なのか深く考えもせず、「久しぶり〜元気そう!」と言ってしまう。
わたしたちは、ターミナルに停まっている列車に入り、かくれんぼをして遊んだ。 そのときに女の子のほうが「今は時間旅行で過去の姿だけど、本当はもっと大人なんだから」と笑いながら教えてくれた。
さんざん遊んでから、彼らと別れる。 それでもまだ時間があるので、ふと思い立って友人の家を訪ねることにした。
友人夫妻は大喜びで迎えてくれた。 彼女とは10年ぶりくらいの再会だ。いろんな思い出話に盛り上がり、泊めてもらうことになった。
翌朝、ゆっくりと起き出した。これでは講義に遅刻してしまう。 「ふたり一緒に遅刻ってのはマズイから、わたしは今日は休むよ!まこちんは行ってきな!」 友人がやけに爽やかにそう言うので、わたしは彼女の潔さにあらためて惚れ直してしまう。
出かける前にお風呂を借りることにした。 キッチン近くに、水色のタオル地で作られたこども用のお城がある。彼女の手作りだな、と思う。 準備をしてお風呂場へのドアを開くと外界が広がり、あぁ彼女んちは露天風呂だったんだった。。。と思い出す。 旦那さんのほうが「大丈夫〜?」と声をかけてくる。 「あの岩は最近モロくなってるから、まこちん気を付けてね」
大きな岩が切り立っている。ところどころ、硫黄の色をしている。 よじ登っていくと、小道のような部分があり、そこへ足をかける。 と、いきなりぐらぐらぐら、、と岩が零れ落ちていった。怖ろしさを抑え、眼下を見ないようにしながら場所を移動する。
そこへ、一組のカップルが向こうからやってきた。 ふたりはキャンピングバッグを担いでいる。 身体の向きを変えて道をあけなくては・・・と思ったとき突然「今は時間旅行で過去の姿だけど」・・」という言葉が蘇る。
女性がわたしを見ながら意味深に笑う。 彼女の、歯をむき出してにかーっと笑う仕草を見て、あぁ。。。!とわかる。
そろそろわたしも自分の時間に戻らなくては・・・と思う。
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