2003年08月26日(火) |
第22章 未練と抑圧と最後 (part 1) |
腑抜けになった私は、毎日仕事らしい仕事もせず、ただ、その抑圧の日々を 淡々と過ごした。 いつやめることを切り出そうかな。そんなことを思いながら。
大口の仕事も残してはいたが、そんなこともう私には関係ない。 こんな会社、どうにでもなればいいのだ。
そんなある日、私は、淡々とした一日を終え、 帰宅しようと駅へと向かう途中、 偶然、外出先から、帰社する彼と出くわした。
考えるより前に、私は、彼に近づいて口を開いていた。
「あきらちゃん、もう会わないの?会わないのだったら、今日、一回だけでいいから話がしたい。どうしても、話がしたい。」
彼は、しばらく考えて言った。 「わかった。ここで待ってて。一回、会社に戻らないといけないから。」
彼が、この日を最後にしようとしていることは、察することができた。
前なら、こういう場面では、もっと、会社からずっと離れたお店で待ち合わせをして、そのままデートしていた。 ここで待てという事は、ここでけりをつけたいという事だ。
しばらくして、彼が戻ってきた。
会社から、少し離れたところにあるお店で、私たちは話した。
「あきらちゃん、私があきらちゃんと会ってる時でも、 私が何も悩んでいないと思ってた?」
彼は、黙っていた。
私は、まず、怪文書の事を告白し始めた。
まだ全部話し終わらないうちに、彼が口を挟んだ。 「あぁ、それなら俺にも来たよ」「えっ?」私は耳を疑った。 「うそ。何て書いてあったの?」 彼は、何も言わなかった。
しばらく沈黙が続いた後、私から沈黙をやぶった。 「もう、会えないんでしょ?」 「今までみたいには会えないね。」冷たく彼が答えた。 「みかちゃんがいるから?私がうっとおしくなった?」 もうどうにでもなれという気持ちだった。 彼は、私の精一杯の皮肉にこう答えた。 すこしイライラしているようにも見える。
「いいか、みかちゃんは、俺のこと好きだし、俺も、みかちゃんが好きだよ。」
なんてことをこんな場面で口にするのだ。
私は絶望感でいっぱいになりながら、彼に泣きながら言った。 「みかちゃんは、幸せだよ。あきらちゃんと仕事もできて、 いつもあきらちゃんに守られて。 私は、あんな手紙が来て、みんなからも無視されて。 なんで私だけ、こんな思いしなくちゃならないのよ。」 醜い女としての私の最後となる言葉であった。
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