2003年08月27日(水) |
第22章 未練と抑圧と最後 (part 2) |
「全部、自分で蒔いた種じゃないか。あの手紙の犯人はお前だろ!?」彼が言った。
私は、わけがわからなかった。 (私が犯人?)
彼の言葉はまだ先へと続いた。
私は、この後の話の中で、周りの人の態度がなぜあのように変化してしまったのかを読み取ることができた。そして、全ての謎が解けた。
その内容を私の知った範囲で簡単にまとめると、以下の通りである。
《ある日、山上さんが彼のところに、私に届いた怪文書の事を告げに来た。
「僕自身が二人の関係がどうこう言うつもりはない。本人同士の問題だ。 しかし、こんな手紙が、彼女にたびたび届くというのは、 中傷にしてもあまりにもひど過ぎないか?りかちゃんがかわいそうだよ」
彼は、驚いたが、さらに驚くことに、 その次の日、彼のところにも、その怪文書が届いた(内容はわからないが)
彼は、彼なりに考える時間を持った。
ところが、ある日、山上さんが、何かの拍子で、 この会社のオツボネともよばれる福山さんにポロリと怪文書の事を洩らしてしまう。
福山さんも、根本的に悪い人ではないのだが、 社内のことは、この人を通して何でも社長に筒抜けになってしまうという難点があった。
元々私たちの関係を知っていた社長は、 福山さんに女子社員の行動を監視するようにつげた。
勿論、怪文書の犯人をつきとめるために・・・
福山さんが、何らかの方法で探っていたのだが、どういうわけか、 怪文書のことが、大方の社員に知れわたる。
社内では、私たちの関係が確信となるも、怪文書の犯人は誰なのか? という騒動の方が大きくなる。
そこで、この物語の初期の頃に登場した「心無い人」が、 「この手紙の犯人は、りかちゃんです。 りかちゃんが、中村さんの気持ちがみかちゃんに向かないように仕組んだ自作自演の犯人です。」と言った。
どのような言い方で、どのようにみんながこの言葉を信じたのかは、いまだに私にはわからないが、とにかく、みんなは、この「心無い人」の言うことを信じることになる。
そうなると、私は、最低最悪の人間に仕立て上げられる。》
私を心配して、親身になって相談にのってくれた山上さんも、馬鹿をみたと、さぞかし腹立たしい思いをしたことだろう。
私は彼に低い声でつぶやいた。 「今まで私を見ていなかったんだね。そんな事を簡単に信じてしまったんだ。。。。。」 言い訳する気にさえなれなかった。
もう、好きなように思えばいい。
もう、終電の時間も過ぎていた。
会社に財布を置いて来ていた彼は、「お前、お金あるのか?」といった。 「今日、帰りに銀行行くつもりだったからない」 「じゃあ、会社の鍵もってるから、会社で寝よう」
私たちは会社に戻った。
会社の応接室のソファーで横になった。 私は、悲しみで眠れないでいた。
気が付くと、向こう側のソファーで横になっていた彼が、私の横に無理やり 横になった。
そして私を抱いた。
こんな日になぜ私を抱けるのだ!?
もう、あの頃の彼の肌の感触を 私には感じることが出来なかった。
私の服を剥いで擦り寄る彼の気配を感じながら、無感情に抱かれた。 これが、私たち最後の夜であった。いや、最後であるようにみえた。という方が正しい。
私の中で、プツンと何かが弾けた。 そして、何かが生まれた。
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