2003年09月04日(木) |
第27章 虚無の日々(part 3) |
私たちは、他愛もない仕事の話で、残業疲れのウップンをはらした。
いっぱいだけのつもりが、ふと気が付くと、 終電の時間を5分ほど過ぎていた。
「あ〜〜〜〜やばい!!!終電出ちゃいましたよ!!!三宅さん!」 「え!!」 店を出た私たちは、タクシーを拾いに大通りへ出た。
しかし、こんな時に限って、タクシーはなかなか来ない。
「ホテルに泊まろうか」三宅さんが言った。
こんな言い方は失礼きわまりないが、三宅さんに対して、私はこれまで、 どきどきしたこともなければ、男性として魅力を感じたことなど、 微塵もなかった。
この時だって、そうである。
夜の闇、そして大通りの車のヘッドライト。 また、過去のトラウマが私を誤った決断に走らせた。
ホテルで、二人きり。 少し話していたが、私の心は後悔でいっぱいだった。
三宅さんが、突然、私の顔に唇を押し当ててきた。 後悔の念とは裏腹に、私は目を瞑った。
私をソファーに倒し、三宅さんの手は、私のVネックのセーターの 中へするりと滑り込んだ。
「やめてください!」
私は、三宅さんを押しやって、ソファーから離れた。
どうしても、この人に抱かれたくない! 瞬間的に、身体が動いていた。
コートを羽織ると、一人、外へ出てタクシーをさがした。 運良く、タクシーは、すぐに私の目の前で止まった。
一人になった私は、タクシーの運転手さんに気付かれないように、 そっと、あふれる涙をぬぐった。
私は、いったい今まで何をやっていたのだろう。 情けない自分を恥じて、どうしようもない悲しみにおそわれた。
あきらちゃんの近くにいると、私はずっと呪縛から抜け出すことは、 不可能だ。 もう、あきらちゃんが見えないところへ行こう。
数ヵ月後、私は、会社を辞める決心をした。
|