2003年09月07日(日) |
第30章 つかの間の至福 |
山上さんとホテルに入り、私たちは、さっきのお店での会話の続きを しばらく楽しんだ。
過去の償いのつもりか、山上さんは、とてもやさしい。
少しすると、「風呂入って寝ようか。先にシャワー浴びてきたら?」 山上さんが私に言った。
そして、「見えないようにこっちに居るよ」と言葉をかけて、 テレビに見入った。
私は、その通りにした。
髪の毛を洗っていると、ドアの向こうのほうから山上さんの声が聞こえた。
「一緒に入っていいかな」
私は、断わるでも、受け入れるでもない返事を返した。 「お湯熱いですよ。」
勿論、心づもりはあった。
少しすると、裸になった山上さんが入ってきた。 私は、振り向かずに頭を流した。
不意に、山上さんが、私の背中から手を回し、手のひらで胸を覆った。
もう、私に、後ずさりする気持ちは無かった。
私もくるりと振り向くと、山上さんの背中に手をまわして、 唇を重ね合った。
こうなったことへの、後悔もない。 私自身も、こうなることを望んだのだ。
お風呂から上がると、二人は、なにもまとわず、ベッドで抱き合った。 何もかもが、あきらちゃんとは違った。 山上さんは、私の耳元で 「どきどきするよ。」といいながら、そっとやさしく、首に舌を這わせた。 そして、いたわるような手つきで、時間をかけて、 やさしくやさしく私の全てに触れた。
次の日から、私は、退社までの数ヶ月を 優しい気持ちですごした。
あきらちゃんとみかちゃんが、約束をしているような場面に出くわしても 今までのように、あまり気にとめることも無かったし むしろ、もう私は、幸せなんだから。。。。 こんな風に思っていた。
山上さんも、いつまでも優しかった。
残りの数ヶ月は、矢のように過ぎた。
ところが、会社を辞める日が近づくにつれ、私の中で、 新たに、迷いが生じ始めていた。
それは、山上さんが既婚者でなければ、そんな迷いはなかったかもしれない。
そして、もう一つの理由が大きかったのだと思う。。
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