2003年09月13日(土) |
第33章 再びの出発 |
「元気か?」
あきらちゃんは、やさしく微笑んで、私を見ている。
思いもかけない突然の再会に、私は、ただ微笑むだけで、精一杯だった。
「このビルの上で、今、自分で会社をはじめたよ」 「うん、知ってるよ、さっき偶然、みかちゃんと会って少し話した。」 「俺、今から、得意先に行かないといけないんだけど、 今度、また電話するよ。電話番号教えてくれる?」 私は、番号を教えて、その日は帰った。
帰り道、私の足取りは軽かった。
あきらちゃんを忘れようと、会社を辞めて、こんな形で再会するなんて、 夢にも思わなかった。
みかちゃんから聞かされた話、あきらちゃんとの再会。 なにもかもが、夢を見ているようであった。
しかし、この時点で、またあきらちゃんとの仲が復活するなどと、 考えていたわけではなかった。
数日後、電話があった。 「今日、空いてたら会えないかな」 「うん、いいよ。じゃあ仕事終わってからね」
私たちは、その日、約束をした。 約束の場所までの道のり、胸が高鳴った。
何年ぶりかで、あきらちゃんとこうして約束をして会うのだ。 また二人の仲が、復活するとは思っていなかったが、 多少の期待もあったのだと思う。
待ち合わせの場所にあきらちゃんがやってくる。 照れたような、焦ったような、そんな笑顔でこちらに近づいてくる。 懐かしい愛おしさに襲われる。
「元気だったか?」
あきらちゃんは、優しくそういった。
私の気持ちは、何年も前にタイムスリップする。 お店まで歩いている時も、すぐ横にあきらちゃんが居る事が、 まだ信じられずに、何度も何度も話しながら、横を見た。
ふっと、手が触れる。
あきらちゃんとまた、こうして歩いている事が、うれしかった。 何年も、願い続けた風景が、すぐそばにあるのだ。
私たちは、お店に入り、会社を離れてからの日々をお互いに話した。
彼は、彼なりにいろいろな辛さを乗り越えてきたのかもしれない。 幾分、肩の力がいい意味で抜けたというか、角の取れた印象があった。
そして、私も気付かない間にあの時よりは、成長していた。 以前のように、おままごと的な可愛い事ばかりを言う子供じみた私は、 そこには居なかった。
昔よりも、本音の会話を楽しめるようになっていた。 心が打ち解けた気持ちだった。
いつまでもいつまでも、二人で話した。楽しかった。
。。。。蘇る。。。。
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