2003年09月19日(金) |
第36章 前進(part2) |
その日の仕事が終わり、私は、会社を出た。
歩きながら、いろいろ考えが巡る。
あきらちゃんは、もう電話してこないかもしれない。 今日、私が山上さんと会ってきていたって、彼は、へっちゃらなのだろう。 これでいいんだ、あきらちゃんと再会して、 まだ私の心は、どうしようもないところまできてしまったわけではない。 今なら、このままあきらめも付く。
そんな風に言い聞かせていた。
すると、電話が鳴った。
あきらちゃんである。
彼も、昨日の会話の件があったからか、幾分遠慮気味な話し方である。
「りか?もう仕事終わった?」 「うん、終わったけど」 内心うれしいくせに、わざとそっけなく答える自分がいた。
「会おうか」とあきらちゃんは、言う。
「もう、会わないって言ったじゃないの」私は、うれしさに負けて、 笑いながら言ってしまった。
その返事に安心したのか、あきらちゃんは、 「じゃあ、またあのビルの下で待ってて、すぐに行くよ」 かまわずに言った。
昨日は、あんな勢いで、あきらちゃんを攻めたのに、 もうこんなにウキウキした自分がいた。
でも、あきらちゃんが、私の事をどう思っているのかというのは、 気にならなくなったわけではない。
でも、今は、会いたいのだ。
その日、あきらちゃんと会っても、お互いに、昨日の事などなかったように 過ごしていた。
「山上さんに、今日のお昼会ってきたよ。」 「そう。山上君とどんな話したの?」 「山上さんに、彼氏いるの?とか、今度は、夜に飲みに行こうって誘われた」
私は、少し、あきらちゃんに、やきもちをやかせてみたかった。
あきらちゃんは、山上さんの言葉にフフっと笑っただけであった。 りかが、俺より山上君を選ぶわけがない。とでも言いたげな自信ありげな表情にも見える。 (あきらちゃんの事を私は、彼氏と言えるの?ただ会っているだけなの?) そんな思いが、よぎる。
それから私は、すこしだけ、無口になった。
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