2003年09月22日(月) |
第37章 気付かない疑念(part2) |
夢のように楽しい気分で帰宅しても、 親のお小言を聞くと、いっぺんに気分が台無しである。
しかし、私は、その頃、そんなことは無視して、 たびたび、無断で外泊を繰り返した。
とうとう、親の堪忍袋の緒が切れた。
ある日、帰宅すると、親が、いつものようにお小言を始める。 うっとおしく思った私は、返事もそこそこに自分の部屋に入り、 バタンと、戸を閉めた。
その日の親は、いつものようにそれで終わりではなかった。
私の部屋まで入ってきて母親が、なにか、弾丸のようにお小言を言っている。
楽しい気分を台無しにされた私は、 「もう子供じゃないんだから、自由にさせてよ!」と、叫んだ。
「親と一緒に暮らしてるんだから、親のいう事聞くのが当たり前でしょう。 自由にしたいんなら、家を出て行きなさい」母親が言った。
「家を出て行けばいいんでしょ!!出て行くわよ!」私は言った。
そうしているうちに、それを聞いていた父親が、入ってきて、冷静に言った。 「親からすれば、いくつになっても、子供は子供なんだよ。 お前たちも大きくなって、大人になったけど、一緒に住んでいる限りは、 家にいないときは、どうしたのかなと、心配になったりするんだ。 無断で外泊したりしたら、なにかあったのかなと、きがきでない。 親が問いかけても、一つ二つ返事を返して、自分の部屋に、入ったりしていては、会話もできないじゃないか。」
私は、黙っていた。
父親の冷静な言葉に、 私の心も幾分冷静に自分の行動を振り返る事ができた。
あきらちゃんをどうどうと、親に紹介できない。。。 そのことを親に話す事もできない私は、 ここ数ヶ月、部屋に閉じこもっては、幸せの余韻にふける事が多かった。
しかし、私だってもう、いい年齢なんだから、自由に恋を楽しませてほしい 「お前が、さっき言ったように、 一度、家を出て自分で生活してみることもいいかもしれない。 そうすれば、たまに実家に帰ったときには、会話も素直にできるようになるだろうし、親のありがたみもわかるかもしれないしな。」
私にとっては、意外な言葉だった。 父親が、私が家を出ることを肯定するような言葉を自ら言うなんて。。。。
「わかった。じゃあ、どこか探して、家を出るよ。」私は、そう言った。
その後、部屋で一人考えていた。
もう、私の心は、固く決心がついていた。
家を出よう。本気だった。
親の心配など、かえりみず、 家を出たら自由になれる。そんな事ばかりが、頭をよぎった。
そして、ふと考えた。 あきらちゃんは、私とかなりの回数、外泊を繰り返している。 家で、奥さんは、どんな風に思っているのだろうか。 無関心なのか、それとも、あきらちゃんがうまくやっているのか。 家で奥さんとは、どんな会話を交わしているのだろうか。 夜は、どんな風に寝ているのだろうか。。。。。 しかも、過去に一度は、他に好きな子ができたと、 離婚を切り出しているのだ。
私なら、もし、自分の旦那さんが、同じ状況であれば、大変つらいだろう。
今まで、自由奔放にあきらちゃんに会い続けていた私は、そのような事を 気に留めたことは少なかった。
私が、あきらちゃんと付き合っていても、いつも不安になったのは、 あきらちゃんには、奥さんがいて、それでいて、平気で(平気かどうかはわからないけど)私との外泊を楽しみ続けているという人間性に 疑問を感じていたからなのかもしれない。
それは、好きだ、一緒にいたいと言う感情と矛盾しているが、 自分で、気付かない部分で、あきらちゃんの人間性への疑問を押し殺して 見ないようにしていたのかもしれない。
勿論、その頃の私には、そのことに気付く余地もなかったが。。。。。
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