旅行の日がやってきた。 私たちは、前日の晩から落ち合い、一緒に朝、出発した。
まだ、世間のお盆休みには早かったが、海辺は人でいっぱいであった。
浜辺で、ビールを飲んだり、二人だけで、バーベキューをたのしんだり、 海のなかで、はしゃいだりして、開放感を満喫した。
夜は、海辺の旅館らしく、さまざまな魚介類がたくさん食卓に並べられた。
部屋食だったため、あきらちゃんにご飯をよそった。
夫婦ようなその行為が、私をうれしくさせた。
食事が終わってからも、次の日どこに行くか話し合ったり、 地元の夏祭りに手を繋いで行ったり・・・・。
疲れて、私が寝入ってしまうと、夜中に鼻をつまんで起こされた。
全面窓の障子をあけたあきらちゃんが言った。
「みてみて!すごいよ!」 あきらちゃんの言う方向をみると、数え切れないくらいのイカ釣り漁船が、 黄色いランプをつけて、海に点々としている。
きれいだった。そして、幸せだった、楽しかった。
どんな時よりも、愛されているのだということを 一番、実感することができた時分だった。
楽しい旅行は、瞬く間に過ぎた。 その旅行は、私の増幅していた不安を少し軽減させた。
私たちは、楽しい会話を楽しみながら、車で帰路へ・・・。
車から見る風景が、田舎町から、ネオンの広がる場所へと移り変わっていく。
あんなに楽しかったのに、もうすぐまた、それぞれ別の家へ帰っていくのだ。
夜のテールランプは何故、切ない気持ちを倍増させるのだろうか。
私は、運転するあきらちゃんの膝に、そっと手を置いた。
あきらちゃんは、黙って、私の手を強く握り締めた。
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