2003年10月03日(金) |
第44章 新たに生まれた疑念(part1) |
あきらちゃんが、ただいま〜と言って、帰って来る。
そして、次の朝も、一緒に会社へ行くのだ。
お金は、節約しなくてはいけなかったが、先に会社から帰って、 愛する人のために、掃除したり、ご飯を作る喜びを感じていた。
質素な生活だったが、幸せだった。
「ほんとなら、もっとオシャレな生活をさせてあげたいのになぁ。 会社が軌道にのるまで辛抱してね。」 彼は、ことあるごとに、そう言った。
時々、仕事関係の人と夜中まで飲んで、そのまま帰ってこない日や、 徹夜マージャンとかなんとかで、帰ってこない日もあったが、 まだ、一緒に暮らしだしてから、日も浅かったし、 なんにも思わずに過ごせた。
いつまでもこうして過ごせると、あまい考えばかりが、浮かんでいた。 その時点では、彼も同じ気持ちだった。
一緒に暮らし始めて、ほぼ一ヶ月。 あきらちゃんの会社に入って、かれこれ二ヶ月が過ぎようとしていた。
私の給料はない。
不動産屋に支払ったお金、前払いした二ヶ月分の家賃 それらは、全部私が、なけなしのお金をはたいて、支払っていた。
しかも、生活に必要な電化製品は、すべて、私のカードで、ボーナス払い。
まだ会社をはじめて、一年未満。経営者であるあきらちゃんは、 カードをつくることができないのである。 かと言って、お金もない。
「今は、閑散期だけど、春になったら、今よりずっと収入は増えるからね。 ボーナス払いにしておいてくれたら、そのとき、俺、お金出すから。」 そんな風に言っていた。
頑張ればなんとかなる、頑張って早く楽な生活を送りたい。 私はそう思っていた。
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