2003年10月04日(土) |
第44章 新たに生まれた疑念(part2) |
ところが、そんな薄っぺらな幸せは、長くは続かなかった。
会社では、仕事が閑散期なこともあったのか、 私と高瀬さんは、いつまでたっても、雑用的な仕事しかない。
早く、本来の仕事をして、バリバリ頑張りたい。 頑張って、会社を軌道にのせたい。
次第に、私の中で、焦りが生じた。 私の仕事への情熱がうずき始めていた。
それは、高瀬さんにしても、同じ気持ちだったに違いない。 彼は、収入の足りない分を補う為に他にも、 パチンコ屋さんでアルバイトをしていた。
いい大人がアルバイトをしてまでも、あきらちゃんの会社にとどまった。
軌道にのりさえすれば、また、張り切って仕事ができる。 会社が軌道にのるまでの辛抱と、ずっと、我慢をしていたに違いない。 私もそうだった。
勿論、あきらちゃん自身も、焦っていた。 そして、自信をなくしていた。
次第に、彼が、家でイライラすることが頻繁になっていた。 それでも、まだ時々は、やさしい日もあったが・・・・。
私は、彼に対して、普通に振舞うよう、努力した。 彼が私に対して、お金を借りている事で、引け目を感じないよう、 常に、彼を励まし、気を配った。 お金の話もできる限り避けた。
そんな努力も空しく、彼は徐々に、夜飲み歩いて、帰ってこない日が増えた。
私自身も、仕事への焦り、お金が底をついてくる事への 不安などを募らせていた。
食費や、生活に必要な最小限のものを買うだけで、精一杯 化粧品や洋服など買う余裕はなかった。
あきらちゃんは、あれで、会社がすんなりうまく行かない事で、 焦って、なやんでいるのだろう。 私が頑張って、なんとか、この時期を乗り切らなければ。。。。。。 まだまだこの生活がはじまったばかりなのだから。
そんな思いと、 男の癖に、いつまでもうじうじして。。。おとこなら、もっと仕事に対して、 どんと、かまえたらいいのに。 自信を持ってバリバリ仕事をこなしてほしい。 私が、一生懸命節約しても、よく平気で飲みに行ったりできるわね。
そんな思いが、いつも交互に私の心を占める。
私より、どちらかといえば、あきらちゃんの方が、気持ちの乱れを 顕著に表に出した。
心はお金で買えない。お金より大切なものがある。 そうは言うが、 最低限の生活さえ保障されないほど、お金がなくなったとき、 人の心は、こうまでも変わってしまうのか。。。 そんな風に感じた時期でもあった。
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