2003年10月19日(日) |
第50章 転機(続き) |
もう一人、カウンターに入っていた、私より古くからお店に来ている女の子が、 「あ〜!津川さん、お久しぶりですね〜。どうしてたんですか?」 と、親しげに、接客を始めた。
私をチラっと見て、その津川さんと呼ばれた男性は、 すぐに、もう一人の女の子の問いかけに答え始めた。 「ずっと、仕事が、忙しくてねぇ。。。やっと落ち着いたから」
私は、その正体不明の衝撃を不思議に思いながらも、 気のせいかなぁ?そう思って、すぐに、他の人の接客に入った。
その日から、津川さんをお店でちょくちょく見かけるようになった。
私が、お店に入って、割と間が無い内に、長期の休暇を取ったり、 それと入れ違いに、津川さんが忙しくなって、 飲みに出られない状況だったりして、 今まで、顔を合わすことがなかったのだが、 本来は、週に1回くらいの割合でお店に顔を出すお客さんであったらしい。
津川さんは、いつも、上手にカラオケで歌を楽しみ、 他愛もない楽しい会話を交わしながら、サラッと飲んで、 あっさりと帰っていく。
他のお客さんにみられる男のいやらしさなど、 微塵も持ち合わせない人であった。
そんなところが、他のお店の女の子たちにも、好感をもたれていた。
私も、それからは、何度も津川さんと会話をかわした。
津川さんは、バンさんともこのお店で顔見知りだったらしく、 二人が、かち合ったときは、カウンター越しに、 二人の楽しい会話の掛け合いに笑いは絶えなかった。
確かに、私は、はじめにこの人を見たとき、『何か』を感じた。
お店のお客さんの中で、一番信頼できる、 バンさんにも、決して感じたことのない 『何か』であった。
その正体が、何なのか、いつも気になっていた。
その思いは、恋した時に感じるソレとは、全く違うものであった。
あきらちゃんのことは、常に、心の中で、渦巻いていたし。。。。 それならば、一体、その『何か』は、何であったのだろうか。。。。
その『何か』の正体は、回を重ねるごとに、 次第にあきらかになっていった。
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