2003年10月20日(月) |
第51章 近づきつつある『何か』の正体(part1) |
私は、お店に津川さんが来るたびに、その『何か』の正体をさがし求めた。
間の良いことに、それから、津川さんは、これまでよりも、 お店に、頻繁に顔を出すようになった。
津川さんは、お店の女の子の名前をあまり覚えていない。 他のお客さんのように、そういうことには、全く興味がなさそうであった。
それでも、いつしか、私の名前だけは、呼んでくれるようになっていた。 私が、ウイスキーが、あまり好きでないことを知って、 いつも、お店に来ると必ず「りかちゃん、ビール飲んでいいよ。」と、 声をかけてくれるようになった。
四月ももう後少しで終わりというある日、 また、津川さんがお店に顔を出した。
まだ、時間が早い事もあって、お客さんは、津川さん一人であった。
カウンターの中には、ママと私だけであった。
「おつかれさまです。今日は、早かったんですね〜。」私が言った。 「うん、仕事の山場を終えたところで、今は、おちついてる時期だからね。 何の仕事でもそうだけど、忙しいときは、 色々バタバタとしたことが重なるよ、おかしなもんだなぁ」
津川さんは、ある会社の経営者であった。
推定年齢から考えると、もう、当然結婚もしているだろう。 間違っても、お店の女の子にちょっかいを出したりするタイプではないし、 紳士的に綺麗なお酒の飲み方をする人であったが、 話もうまいし、嫌味無く、さりげないやさしさを持ち合わせた人で、 彼女がいるような雰囲気がしていた。
私は、頭の中で、津川さんは、結婚していて、 きっと彼女なんかもいるだろうな 津川さんのような人を 魅了する人は、とても魅力的な女性なのだろう きっと、津川さんも、その人を大切にしているのだろうなぁ。 などと、勝手な想像をしていた。
私が、水割りをつくっていると、ママが、津川さんに話しかける。 「ゴールデンウィークは、彼女と旅行でも?」 「あ〜、ゴールデンウィークは、休めるかどうかわからないからねぇ」 津川さんが言う
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