2003年10月21日(火) |
第51章 近づきつつある『何か』の正体(part2) |
やっぱり、彼女がいるんだな。 私は、なぜか、ほんの少しだけ、心の中で落胆した。
私、なんで、がっかりしたんだろう? 自分で感じたことが、不思議でしかたなかった。 自分で津川さんの彼女の想像までしていたのだ。
津川さんに恋をしていたわけではない。 まだまだ、私の心には、べったりと、 あきらちゃんへの想いが張り付いていた。
その証拠に、お店でお客さんが歌う切ない歌に、自分の想いを重ね合わせて、 よく、心で、苦しく切ない思いに胸を締め付けられていたのだから。。
「でも、お休みだったら、彼女を連れて、行くんじゃないの?」 ママが、続けた。 「そんな事でも、あったらいいけどなあ・・・・」 ゆっくり津川さんが返事をした。
あれ?彼女いないのかな?私はまた、津川さんの言葉を探る。 そこまでの、強い気持ちではないが、津川さんの言葉に こんなに反応してしまうのは、何故なのだろう。
はじめに感じた『何か』の正体が、そこにあったのかもしれない。
そのうち、別のお客さんがバタバタと入ってきて、 私は、その場所から離れた。
やはり、その頃も家に帰ると、悲しみにくれる毎日は続いていた。
ゴールデンウィークは、お店が休みであった。 また、実家に帰って、のんびり過ごそう。 実家へ帰ると、温かい食事や、家族と過ごす安心感がある。 それらを求めて、私は、長い休みを実家で過ごした。
ゴールデンウィークが明けて、また孤独な家とお店とを 往復する生活が始まった。
お店は、夜の7時からはじまるが、開店準備は、 お店で働く女の子達の仕事である。
ママは、その1〜2時間後に、やってくる、
その日、開店準備を済ませて、間もない時間に、バンさんがやってきた。 お店には、まだ早番である私ひとりだけだった。
しばらくは他愛もない会話をしていたが、 バンさんが、また、遠慮がちに私に言う。 「りかちゃん、こんど、お店が休みの日に、食事でも行こうよ。」
人の良いバンさんに、私は、はっきりと断わりきることができないのである。 「ありがとうございます。そうですねぇ。そんな時間があれば、いきたいのだけれど。」 やんわりと、断わったつもりであった。
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