2003年10月22日(水) |
第51章 近づきつつある『何か』の正体(part3) |
もしも、バンさんと休みの日に、食事に行ったとしても、 100パーセント、私にそれ以外のことは、求めないであろう。 バンさんは、そう言う人なのである。
生粋にただ、食事をして、話をして、そして、 帰って来るだけであろうことは、想像がついた。 それでも、私は、行かなかった。
お店での仕事とプライベートをきっちりと、分けておきたかったからだ。
「じゃあ、携帯の番号だけでも聞いたらだめだろうか。。無理だよね。」 また、自信のなさそうな声で、バンさんが言う。
「う〜〜〜〜〜ん。」 私は、はっきり断わる言葉をまた言い切れない。
他のお客さんへなら、「だめですよ。」と、笑ってハッキリと言えるのに、 バンさんは、こう見えて、繊細で傷つきやすく、そして、 とても人が良い人だとわかっているので、断わりたいのだけれど、 傷つけたくもないのだ。
「やっぱり、だめか。。。」 バンさんが、落胆しているのがわかる。
「あら〜いらっしゃい。バンさん。」ママが、出勤してきた。 「なんだ〜ママ、せっかくりかちゃんと二人きりで、楽しんでたのに。」 いつもの、冗談を言っているバンさんに戻った。
助かった。私たちの会話は、そこで、中断された。
それから数日後、津川さんがお店にやってきた。
その日は、お店はお客さんがいっぱいで、とても賑わっていた。 ママは、私にカウンターを任せて、ボックス席のお客さんと話していた。 カウンターには、二人連れのお客さんが、数組座っていた。
私は、話しながら、津川さんのボトルを用意した。 いつものように、「ビール飲みなよ。」と、言ってくれた。
「じゃあ、頂きます。」 お客さんからお酒を頂いている間は、 そのお客さんと会話をするのが、鉄則である。 私は、しばらくの間、津川さんと、あれこれ楽しく話をしていた。
津川さんが、ポケットから、携帯を出した。 「あっ!それ、私とおんなじ携帯ですよ〜」私が言った。 その携帯は、私と同じ機種であった。「偶然ですねぇ」
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