けろよんの日記
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2008年06月07日(土) |
二人目産みません 産めませんー女が子どもを産まない本当の理由 |
二人目産みません 産めませんー女が子どもを産まない本当の理由 北原梨央 新風舎 2005年
出産・育児・保育所など、WM(の端くれ)の私には興味深い内容。 であり、実際そこそこ面白かった(と書いたら著書は怒るか?)のだが、 文章のそちこちに違和感があり、「負け犬の遠吠え」を初めて読んだとき以来の むずむず感についPCのキーを叩くのであった。
そもそも、この本は実にアエラ的であるなあ。というのが第一の所感。 「保育所事情」「母性神話」「分類される女性」「虐待」 「雅子さまと雅子さま世代の憂鬱」 「(主に北欧の)外国事情・行政等へのメッセージ」と6章から構成される。
このテーマで軽く何十冊の本が書けるぜという内容を章立てにしているため それぞれの章の印象がどうしても散漫になる。 また、筆者の個人的体験を基に、出典がイマイチよく理解できない資料 (これは自分がモノシラズだからということもあろう) 同じく、アンケートのコメント、小説・専門書等の参考文献からの抜粋を バラ積みして強引に筆者の結論にショートカットで導かれているという 不快感がある。
・所得が高いから保育所に入れない ・公立保育所に入所するための措置基準が公務員や教員のために 作られていると言っても言いすぎでないほど民間(フリーであれば尚更) に”合っていない“ ・専業主婦の悩みは内へ屈折しており根源は夫。 ・配偶者控除や第三号被保険者が少子の遠因 などと書かれるとえーそれはちょっと違うんじゃないかと 本に向かって突っ込みたくなるし、 専業主婦のアディクションの下りには専業主婦への侮蔑・偏見を感じる。 更に辛い過去の吐露と上から目線の意見の上申は激しく揺れる天秤を思わせる。
この本が「少子」や他の育児エッセイのように個人的な体験や 周囲の事情を踏まえての個人の感情や見解が一冊の本となっている。 あるいは綿密なリサーチの結果としての新書、学術本としてならば もっとすんなり読めただろう。 とはいえ、あとがきに筆者自身も書いてあるように 「フェミニズムの専門家でも、トラウマ専門の精神科医でもなく、 予備校生に国語を教える一教師にすぎません。」である女性が 自身の虐待、そのトラウマを乗り越えての出産、 保育所入所に関する理不尽等を通じて感じた義憤やマグマのような 怨念を投入して書いた本であり、このスタンスにいる人しか書けない 内容でもある。
月並みな言葉でいうと「非常に荒削りだが情熱的」でなんとなく 引っ張られて読んでしまう。 特に筆者の思い入れを感じた「保育所」「虐待」のテーマに特化して、 もっと専門的に密度の濃いものを書いてみたらいいのに。
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