鼠小僧白吉のうだうだ日記

2000年12月22日(金) 八十助最後の舞台!20世紀最後の歌舞伎!

今世紀最後の勧進帳に八十助最後の舞台、今年最後の歌舞伎座は最高の舞台でした!

そういやー、うだうだ日記で歌舞伎のことを書いたことはあったような、なかったような。けど、自己紹介のページを見てもらえればわかるように、鼠小僧は観劇好きでちょくちょく見に行っておるのです。今年も結構いきました。特にこの年末にきて三ヶ月連続の歌舞伎座。そして昨日、今年最後の観劇となる歌舞伎鑑賞、最高の芝居でした。

観劇仲間であるKさんと夕方新宿で待ち合わせ、丸の内線で銀座の歌舞伎座へ。今月の夜の部は、人殺しの関取(う〜んタイムリー)濡れ髪の物語「双蝶々曲輪日記」からその濡れ髪とその母の心の葛藤を描いた場面「引き窓」。そして言わずと知れた「勧進帳」。そして、おいらは初めて耳にするタイトルなのだが、結構有名な芝居らしい「蘭蝶」の三つ。

まずは「引き窓」。前みたときは誰が演じてたか、休憩時間Kさんと話がはずんで思わず筋書き(プログラムのこと。これをみればその日やる芝居が以前いつ、だれが、どこで演じたかとかがわかる)を買うのをつい忘れてしまったため、思い出すことはできないが、この「引き窓」の段と、「引き窓」の前の場面「角力場」の段を見たことがあり、話のせつなさに思わずほろりときてしまっていらい、この双蝶々はおいらのお気に入りの芝居の一つでもあります。
段四郎の濡れ髪も風格があり(なんせお相撲サンの役ですから)まあ、よかったのですが、それより良い味をだしていたのが松パパこと松本幸四郎の南方十兵衛。この南方という役所は真面目な村侍で、南方の母の実の子(南方は養子)が実は濡れ髪という設定。松パパ、いや幸四郎の芝居ちゅーのはちょっくら堅苦しいところが無きにしも在らずなのだけれど、その堅苦しさが、実の子を助けたい母のことを思う気持ちと、お役目(殺人を犯した濡れ髪を逮捕すること)との間で揺れ動く様をいいように表現していて、非常に、ほろりホロリとさせられるいい芝居となっていました。
暮れ押し迫りあわただしい日常の中で、悲しいくらいに人情が交錯する本当に良い芝居を見せてもらいました。

さー次は勧進帳。先月歌舞伎座でポスターを見たとき、この勧進帳の配役を見て「絶対に行く」と心に決めました。えー、すごいメンバーなんです。團十郎の弁慶に猿之助の富樫、さらには芝翫の義経ときたもんだ。Kさんから電話で「昼と夜とどっちにしようかねー」って言われてKさんの意見は何も聞かず「絶対に夜!」とおいらが言ってのけたほどすごいメンバーなのです。(たとえがわかりずらすぎるかも・・)。
さてこの勧進帳、幕のあいだ全てが見所いっても良いほどの芝居なわけですが、おいらが一番好きな場面はなんといっても最後の最後、幕がひかれたあと、最後、弁慶が花道を下がって行くシーン。歌舞伎独特の歩き方(飛び方?)で「余韻を持って颯爽と」下がって行くというシーンなのですが、ここでの勝負はどれだけ「余韻」をだせるかと、どれだけ「颯爽」と去っていけるかが決めて。さー團十郎は!「たっぷりと」「二十世紀最後!」「成田屋(團十郎の屋号)」などと声が飛び騒然となる歌舞伎の中を、そりゃー見事に去って行ってくれました!

さー、そして歌舞伎座20世紀最後を飾る舞台は「蘭蝶」。この芝居はおいらもはじめて見る芝居だったのですが、主役の役所、蘭蝶を演じる澤村宗十郎の家のお家芸だそうでして、お家の宝を探す為に男芸者になりすまし吉原へ忍び込み、その間に芸者と深い仲になり、女房が芸者の別れてくれとなぐりこんできて、そんなこんながあったけど、最後は宝が手に転がり込んできて、めでたしめでたしという、ま、歌舞伎にありがちなお話だったのですが、芝居の最後の最後にとんだおまけがついていました。
坂東八十助がほんのちょい役でラストシーンで登場してきたのです。
そう、八十助は(いろいろありましたが・・・)来年、1月歌舞伎座で三津五朗を襲名するわけでした、「坂東八十助」の名前で舞台にあがるのは今月の歌舞伎座が最後になるわけです。
宗十郎がそのことを紹介すると、八十助、
「初舞台より三十余年、慣れ親しんでまいりました八十助の名で舞台にあがるのも当座が最後になりました。明けて新世紀、21世紀の歌舞伎座で、かねてよりの念願でありました父の名である三津五郎を襲名することにあいなりました。」
観客席からの盛大な拍手、飛び交う「大和屋」「十代目」の声。
一年最後のしめくくり、最高の雰囲気になった歌舞伎座で今年一年の観劇を締められたのは本当に幸せ。

その後再び新宿にもどり、Kさんと芝居談義をしながら酒を一杯(おいらは八海山)。

一年の締めくくり最高の雰囲気の中、良い芝居でしめくくり、さらには一杯の日本酒と、ま、卒論じゃーなんじゃで気ぜわしい年末ですが、非常に楽しんだ一日でした。


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