書泉シランデの日記

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『ドン・ジョヴァンニ』ウィーン国立歌劇場日本公演
2004年10月10日(日)

『ドン・ジョヴァンニ』期待以上に素晴らしかった!大枚はたいた価値大いにあり。そんなんで、家に帰ってきても頭の中で音が鳴ってます。これだから道楽の道は止められない。

しみじみこれはドンナ・アンナ(グルべローヴァ)のオペラなんだと感じました。グルベローヴァ、今日は彼女としての最高の出来ではなかったと思うけれど、それでも十分、他を圧倒していました。年齢を考えたらとうに盛りはすぎているのに、そんなこと作品中では微塵も感じさせません。ドン・オッターヴィオ(シャーデ)をはるかに凌ぐ表現力+声量。「私、死んでしまう」最高。

シャーデは「彼女の心のやすらぎこそ・・・」とか「恋人を慰めて」とか、いかにもモーツァルトのテノールという感じの難曲を歌ってくれました。声量がもう少しあるということなし、ですが、それはまあ、劇場が大きすぎるわけで・・・。(この間、「コシ・ファン・トゥッテ」をテレビで見て、初めてシャーデに惹かれたのに、今日、たっぷり聞けて大満足。今度は『魔笛』のタミーノ聞かせてよ。)

キルヒシュラーガーのツェリーナ大層かわいかったです。「ぶってよ、マゼット」よかったな。マゼット君はコリアンのイン=スン・シンというバス。田舎者の素朴な感じ一杯の熱演でしたが、ドン・ジョバンニと比べると魅力なさ過ぎ。残念ながら東アジア体型がわざわいする。

実は『ドン・ジョヴァンニ』の役ではドンナ・エルヴィーラが好きでした。最初にテレビで見たときの、バルトリの印象が強かったからかもしれないけど。今日のエルヴィーラ、シェルクはどこといって疵のないうまさでした。行動する女ドンナ・エルヴィーラ・・・でも今日はグルベローヴァの存在が大きすぎたわ。

しつこく書き続けますが、名前も全然知らず、全く期待もしていなかったレポレロ役はムラーロ。グルベローヴァがホームランなら彼は本日の三塁打。いかにもレポレロというひょうきんさ、たまりません。結構重々しい役もこなしている人のようですので、つまりは演技が出来る、ということでしょうか。この人のフィガロなんか聞いてみたいものです。

騎士長は最初と最後にしか出てこない役ながら、声量十分、堂々たるものでした。まだ30代前半、これからが楽しみのアンガー。ワーグナーは歌わないのかしら・・・。

さて、最後はタイトル・ロール、ドン・ジョヴァンニはトーマス・ハンプソン。そりゃ、この人、舞台栄えのする容姿ですわ。歌もうまいしね。でも、正直なところ、本日一番の凡打でした。

そうそう、指揮者は小沢征爾さん。指揮のよしあしは私にはさっぱりわかりません。だけど、オケの音に気づくとき、いつも、あ、きれいだな、という感じで気づいていましたから、上々だったんでしょう。休憩時間にピットを覗いたところ、そこにあったのは、ずいぶんとごついヴァイオリンでした。中欧的な顔立ちの楽器ばかりで、ふ〜ん、こんなんであんな繊細な音がでるのか、と。

結構奮発したチケットだったので、席も2階左ながら一番前、しかも、両隣なしという気楽な席。この次からチケットを買うときここを指定したいくらい。ただし音のバランスがちと悪いのと、一階席の騒音(飴の包み紙を開く音など)がびっくりするほど聞こえるのが難。(シャーデのアリアのときにガサゴソと騒々しかったのは誰だ!)



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