日本中世史の五味文彦氏の講演を聞く。 声も通るし、内容もよく整理されていてわかりやすい。非常にわかりやすい、とはいわないのは、レジュメに使われる年号に西暦の注記のないものが多く、中世史に不案内な私には順番がわかりにくかったから。レジュメに余白がないのも嫌い。書き込めないから。 内容は、歴史と文学の接点、というか、紙背文書を文学資料の解読に使う、というもので、それ自体、新味のあることではないが、五味氏の手にかかると、私なんぞ<それだけのこと>と片付けがちなものが、いろんな方向へと展開の可能性を持つ糸口になる。なるほどね〜、と感心。<それだけのこと>から先を見通す力が大事なんだなと思う。しかし、その力を持つためには、「夜は飲んだくれて終わるので、朝6時から机に向かいます」という根性が必要なのである。総じて歴史学者には怠け者はいないような気がする。 もう一つわかったのが、五味氏が巧みなセールスマンであること。佐川急便のドライバーが配達と運転と営業をこなすことは知られているが、五味氏もそれが出来そう。研究と講演・執筆と宣伝。宣伝して売ろう、というところまで念頭にあるから、執筆にもおのずと夢がある?もしかして、今度これだけ売れたら車買い替えよう、な〜んて思っていたりして。 ともあれ、勉強になったし、昨今ひたすら敬遠されがちなお堅い世界に、こういう学者がいることはいいことだ。研究の余得として得た一般受けしそうなエピソードを面白おかしく語る人は時々いるし、彼らは彼らで全然悪くないけれど(○家さんとかね)、自分本来の仕事を一般に向けてしゃべり、宣伝して本を売ろうというのは、啓蒙的な見地から見て立派な姿勢ではないだろうか。これを商才に長けている、といってはいけない。 秋は千葉の岩佐又兵衛で終わり、と思っていたが、「明月記」の五島美術館もあるんだった・・・月曜日は宮内庁書陵部の展示だ・・・さすがに忙しい。五味氏は五島でも講演するみたい。藤原定家直属スポークスマンっていうとこか。
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