書泉シランデの日記

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「拙者はバイオリニストでござる」 
2004年10月26日(火)

今日は本当にあわただしくて、夕ご飯抜きどころか、コンサートホールまで時計を見ながら走った、という有様。そうまでして何で行くんだ?と初台の駅を降りたときには自問自答。

でも、やっぱりまた行ってしまいそう。ヴェンゲーロフうますぎ。おまけにとっても誠実なエンタテイナー。

FAEソナタのスケルツォで開演。準備体操もなしで、流れに飛び込むような感じ。ピアニストはこの時点では、あらら・・・、でも後半はうまかった。その後、ブラームスのvnソナタ1番。私はブラームスがあまり好きではないのだけど、ぐいぐい引き込まれた。技巧的な曲でもないし、アマチュアでもこれがひける人はいる。でも、今日のヴェンちゃんのを聞いたら、「そうだよ、この曲はこういう骨太な陰のある曲なんだよ、ちょいちょいっとこぎれいにひいて終わる曲じゃないよ」といいたくなった。文字通り、一音たりとも適当にはひいていない。本格的なプロは手を抜くことはめったにないけれども、これほど音に没入してひく人はそうはいない。(二度と聞く気がしないプロはカントロフ。この人は×。)もうここまででチケット代の元はとれた。

後半、超絶技巧曲をトーク付きで次々と披露してくれる。このトークがまた面白いんだ。ヴィニエフスキー、パガニーニ、サンサーンス、クライスラー、と次々に繰り出す。顔をしかめてひくような難曲を涼しい顔どころか、微笑みながら楽しげにひいてくれる。まるで、幼稚園児がおだてに応じて連続逆上がりをしてくれるみたい。しかも、これが素晴らしいことだと思うのだが、超絶技巧がそれだけで突出せず、ちゃんと曲の一部になっている。私はへそ曲がりなので、曲芸みたいな演奏はバカにしている。でも、今晩聞いたのは、断じて曲芸ではなく、個々の曲のあるべき姿だった。よかったな〜♪

アンコールでひいたバッツィーニ「妖精の踊り」、こんなもん、遊びながらひくなよ〜、首つる奴が出るぜ〜、といいたくなるほど、愛嬌たっぷり。これってこんな楽しい曲だったっけ??(「妖精の踊り」は本当に超絶技巧曲の極地にあるような曲)

最後に「拙者はバイオリニストでござる、さらば!」とヴェンちゃんは舞台をあとにした。この日本語、かなりきれいな発音。

さすがにサイン会はなかったが、同行したオネエサマと出待ちをする。至近距離でヴェンちゃんの顔を拝んだ。もち肌で、らくだの目をしたロシア人。まだ29歳だなんて信じられない。どういうふうに老成していくのかしら。長生きして見守らなくっちゃ。





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