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『韓洪九の韓国現代史』
連れて行って欲しいと頼まれて、樋口一葉文学散歩。私自身は前に行ったから気が重かったのだが、頼まれるとつい嫌とはいえず、午前中から吉原遊郭の跡地やら、一葉記念館やら一葉旧居跡、『たけくらべ』がらみの神社仏閣。最後は東博の講演会(山田有策「生きている一葉」)。その後、常設展の見学にまで付き合わされて、骨の髄まで疲れました!講演、つまんなかった。寝ている人多数。私もその一人。東博平成館の講堂の椅子、とっても気持ちよく寝られます。
さて『韓洪九の韓国現代史』 韓洪九/高崎宗司 監訳
この手の本って、読む前にイデオロギー的な立場、あるいは、政治的なスタンスから選別されてしまうことが多い。私はこの本がどういうふうに選別を受けているのか、あるいは評価を受けているのか、不聞にして知らない。私には学ぶところの多い本であった。右にせよ、左にせよ、ふるいにかけてはいけない本である。
そもそも急激な近代化による弊害、近代的市民層が育たないまま日本の支配を受け、解放されてからも植民地支配の負の遺産が残ったこと、朝鮮戦争とその前後の混乱によって、半島の未来を担えるような人材が闘争の中で次々と姿を消していったこと、長い軍政の招いた問題などなど。具体的に取り上げられている事件の数々は、おそらく韓国人ならほとんどの人が知っているものなのだろうが、私は知っているものでも、ほんのアウトライン程度にとどまる。でも、著者の語り口は、そういう無知な読者を置きざりにすることはない。
隣国がどれほど複雑な年月を経過してきたか――国家にはそれぞれ独自の複雑な事情はあるだろうが、しかし、朝鮮半島の場合は比類ないほどの複雑さに置かれたのではないか。日本が驚異の戦後復興を成し遂げつつある間に半島で展開された戦争や混乱のことに余りに無知であったことを反省した。また、韓国人の行動様式(と断言できるほどステレオタイプ化するのは問題だけど)についても、ふ〜ん、と思わせられた。朝鮮半島と日本は、植民地支配のみならず、今も昔も全く立場を異にする問題は多いが、共通する問題も少なくない。双方、理解しあって(そのためには学ぶべき事柄はきちんと学んで)共生していかなければならないと思う。
著者は韓国人にこれまでの出来事を先入観や自己弁護に陥らず、素直に見つめて考えてみたらいかがですか、というような立場で解説をしている。まず結論ありき、ではないため、私のような無知は無知なりに考えながら読み進めることができる。歴史認識の問題に関心があったり、市民運動に参加している人には是非読んでもらいたい本だと思う。(まあ、実際に運動している人たちは所属したり、信奉したりしている組織の推薦がないと、なかなか読まないもののようだけど。)
平凡社
★★★
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