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『ペンギンの憂鬱』
2004年12月22日(水)

『ペンギンの憂鬱』  A.クルコフ 沼野恭子訳

表紙カバーのペンギンの絵がこの作品のペンギンを見事に描き当てている。集団で暮らすはずのペンギンが、動物園のリストラで里子に出され、売れない小説家のもとに送られる。冷凍庫から鱈やカレイなどを出して与え、バスルームで泳がせながら、小説家はペンギンと暮らす

小説家は新聞社から生きている人間の追悼記事を書くという奇妙な仕事を請負う。それがうまくいき、生活は安定するが、次第に追悼記事の対象となった人間が不慮の死を遂げ始める。

一方、ペンギンと暮らすアパートに、追悼記事の依頼を通して知り合ったミーシャの娘ソーニャや、そのシッターを勤めるニーナが同居するようになる。無愛想なペンギンが孤独に気ままに歩き回るアパートに擬似家族が生まれる。ペンギンがらみで知り合った警官のセルゲイや元飼育係の老人とも主人公は温かみある友情で結ばれる。

しかし、平穏な日はそうそう続かず、セルゲイも老人も死を迎え、主人公とペンギンがマフィアの葬式に招かれるようになり、日ごとに不可解な状況に取り巻かれていく。ペンギンも病気になって入院。何でそうなっていくわけ?と思いながら、読者はこれがほのぼのとした小説ではないことを知らされる。そして現代ウクライナの深い闇を垣間見させられる。

ペンギンという生き物がこんなに示唆的な存在であるとは!
犬も猫もサルもペンギンの代用にはなりませんね。

新潮社
★★★


ペンギンって好きです。
『バケツでごはん』(玖保キリコ)というマンガもありましたね。あのペンギン「銀ちゃん」もなかなかだった。




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