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『密やかな結晶』 小川洋子 ゆうべ、FMで今年のバイロイトを聞きながら読了。『ジークフリート』ミーメ役のG.クラークってなんてうまいんだろうと毎度のことながら感心する。アクロバット的なうまさだと思う。 それはさておき、この小説の魅力は、「存在しないものを言葉だけで存在させる」ところに尽きる。 どこの島かわからないが、そこではある日「消滅」がおき、特定のなにかが消滅する。それはフェリーであったり、鳥であったり、ラムネであったり、オルゴールであったり、実にいろいろなのだが、人々はその物を廃棄し、記憶をも消滅させねばならない。ほとんどの人は、物がなくなるにつれ、記憶も薄れていくけれども、中には記憶をキープできる人たちがいる。そういう人たちは記憶狩りをする秘密警察に連行されていく。 主人公は小説家。父はなくなり、母は記憶狩りの犠牲となった。元フェリーの整備士のおじいさんが爺やのように彼女に仕えている。おじいさんの協力を得て、彼女は自宅の隠し部屋で記憶狩りの対象となった編集者をかくまっている。 この3人の生活を描くと同時に、劇中劇よろしく、入れ子のように主人公の書く小説が進行する。声を失うタイピストの話。 「消滅」は次第に肉体に及ぶ。足が消え、腕が消え・・・人の存在は何によって確かなものとなるのだろう?記憶を持って、言葉を持って、語ることの力って何なのだろう?これは寓話なんだろうか?メッセージがありそうで、声高には語られない作品・・・いろいろ考えさせられる。 小説の面白さは読み終わってからしみじみと思い返すところにある。読了したら、それっきりになる作品は結局「消滅」の対象なんだよね。 講談社文庫 ★★★ さてさて、今日もせっせと朝からワックスがけ。 その最中に息子、朝帰り。 さすがにやばいと思ったのか、窓拭きを一通りやってから、自室の大掃除に励んでくれた。でも、そんなにゴミを出されても、当分収集はないんだよ・・・。 夕方、雪が10センチ近く積もった。夏みかんと金柑は、枝が折れるといけないので、雪を払う。重い雪である。老犬は雪ではしゃぐ性質なので、用足しに出たとき興奮させないよう気を遣う。 今年も例年並みに大掃除完了。客間のワックスかけはサボるつもりだったけれど、結局やってしまった。ここ数日掃除の間、あっちへ追われ、こっちで閉じ込められの老犬も何とか無事。お餅もつきあがったし、おせちも必要最小限で都合がついたし、めでたし、めでたし。 どうでもいいけれど、「プライド」に出ていた戦闘竜って、うちの隣の息子さんに酷似している。あれで滝本が勝ったというのは私には納得できない。今日初めてわかったのだが、我家は大晦日に格闘技を見るのが好きなようだ。誰一人として、実践する人はいないのに。
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