書泉シランデの日記

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『バシュメット/夢の駅』
2005年11月21日(月)

ヴィオリストのバシュメットのエッセイということになるのだろう。たぶんもっと正確には、断片的聞書、本当の著者は小説家/ジャーナリスト志願者。違うかな?

2400円も出して、いつこんな本を買ったのだろう?いつ買ったのか記憶にない。このところ、ぽつぽつ読んでいたのを今日読み終えた。

シューマンの「おとぎの絵本」が気に入っていて、一時バシュメットにはかなり入れ込んでいた。ところが数年前にリサイタルを聞いてから醒めてしまった。ヴィオラそのものは相変わらず好きですけどね。バシュメットはなんだか器用にこなすステージっていう印象が強かったのだ。もちろん一定以上のものは提供してくれた。だが、その先の真剣勝負がなかったのだ。たぶんVIPでもご来場の節は違うのだろう。(今年のリサイタルに行った知人が図らずも同じようなことを言っていた「お仕事って感じの演奏だったわ」)

それはともかく、このエッセイ、リヒテルとのからみは面白かった。リヒテルは古きよき時代の音楽家だったのですな。あとはクレーメルとかロストロポーヴィッチとか、その人に興味があればまあ目を通すのもよいだろう。シュニトケやゲルギエフも出てくる。ムターもちらっと通りかかり、美智子皇后はしっかり登場する。でも、深い内容の話は何もない。政治的な話もない。つまらない。同じエッセイならクレーメルの『小さなヴァイオリン』や『琴線のふれあい』のほうがいい。(それだって、クレーメルに関心のない人に面白いかどうかは?だが。)

手持ちのCDにリヒテル×バシュメットで、ヒンデミットとショスタコーヴィッチのソナタが入っている。この本を読んでから聞くと、ははーっとありがたい気持ちになる。私の耳はロバではないが、いい加減である。



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