書泉シランデの日記

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『ウプパと親孝行の勝利』
2005年12月19日(月)

久しぶりに書きます。
週末三日ほど名古屋方面を徘徊して、でも、幸いに雪の日は1日だけで、その日はちゃっかり車に乗せていただいたので、新幹線の遅れ程度で事なきを得ました。

さて、留守中に録画したオペラ、ヘンツェの2003年の新作『ウプパと親孝行の勝利』(なぜかクラシカの番組表では『ルプパ』となっているが)を見た。新作だしなー、と全然楽しみにすることもなく(だって新しいものって音楽がやかましかったり、芝居も演出家のひとりよがりだったりしがちじゃありません?)、でもまあゲルネが出るし、見るか、というところ。

話は民話です。3人の兄弟がいて、上二人はダメ、というお定まりパターンで始まり、親のために難題(ウプパという鳥を捕まえる)をこなす、一つ片付けば、次の試練、という繰り返しが3回くらい(これも定番)、途中で花嫁を見つけ(よくある話だ)、最後は兄弟に裏切られ窮地に陥るが、助けられ、無事国に帰り、めでたし、めでたし。

わがゲルネは賢い末の弟(あんまり賢そうでもないが)。そして一緒に旅をするデーモン(デーモンなんだから悪魔なんだろう、そんな格好していたし)がとてもチャーミングで楽しい。エインズリー(tr)が演じて実にうまい。歌もうまいが、芝居がうまい。なにやら少し同性愛めいた目つきが最高。それにクライマックスはこのデーモンの「赤いりんごの話をして」というところなのだ。デーモンの「赤いりんご」への憧憬が『ウプパ・・・』の世界のすべてといってもいい。妙なる調べをうたう鳥ウプパなんか実はどうでもいいのだ。

花嫁のアイキン(sp)とゲルネが井戸に落とされて、その中で愛をうたうシーンも、かの有名な『アイーダ』のラストよりよっぽど感動的である。

舞台がとても素敵だった。無駄がなく洒落ていて、ライティングが美しい。こういうものこそ生で見たいと思わないではいられない。ヘンツェの音楽も自然になじめるものだったし、間違いなくスタンダードになる作品。きっとそのうち日本でも上演する・・だろう・・・か?



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