書泉シランデの日記

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『ワルキューレ』 マリインスキー劇場
2006年01月12日(木)

ゲルギエフ×マリインスキー劇場の『リング』のチクルスだというので、全部買った、といいたいが、とてもそんな財力はなく、お気に入りの『ワルキューレ』だけ。

指揮者のゲルギエフのほかはしらない歌手ばかり。観客の大半はそうだったろうと思う。私はオケにはそれほど興味がないので、何しろたいした期待はしていなかった。大体、ゲルギエフって名前が出ると切符の値段がアップするし、あの中途半端なヒゲ面が嫌。

ところがどうして、いざ始まるとVorspielからぞくぞくするような低弦の響きじゃありませんか。チェロのソロなんてもう鳥肌ものです。しかも管のキレがよく、元気もよく、それでいて暴走しない・・・この辺はゲルギエフ先生の手綱さばきでありましょう。思わず切符の値段を忘れました。

歌のほうは、というと、ジークリンデをうたったフドレイという人が素晴らしい出来。声量もさることながら、流れるような歌いっぷり。荒削りだったかもしれませんが、小手先の技術で小奇麗にうたうよりどれほどよいか。しかも、ヴィジュアル的にも○。

私は『ワルキューレ』ではジークムントが好きで、「冬の嵐は過ぎ去り」とか、ブリュンヒルデとのやりとりの"Siegmund!Sieh auf mich!"など、お気に入りの部分があるのだが、残念なことにジークムント役は視覚聴覚両面で私的には不合格。

ブリュンヒルデ(サヴォーク)とヴォータン(キート)は、最初はあんまりのれないなあ、と思って聞いていたのだが、スタミナを調整していたのか、終わりに行くに従って充実度を増した。"Der Augen leuchtendes Paar"には思わずうるうる。

ヴォータンという神様のいい加減な性格が『リング』のあちこちを面白くしていると思うが、今回のヴォータンは、クプファーの演出のような遊び人ヴォータンではなく、年のせいか短気なわがまま爺という印象。ともかくも楽しめて、それが何よりであった。

マリインスキー劇場は実は前回来日のときにも聞いていた。そのときはあんまりどきっとするほどの印象ではなかった。でも今回はオケについては大満足。大枚はたいた甲斐があったというもの。



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