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『ウィーン・フィル 音と響きの秘密』 
2006年01月22日(日)

著者 中野雄(文春新書)。

さあ、このタイトルに何を期待するか?
新書だし、大掛かりな謎解きは期待のしようすがありませんが、結局「はあ、さようで」と承っておくだけの内容でした。

ただの音楽ファンの耳には届きそうもない、ウィーンフィルの新旧の団員さんたちの発言が随所に引用されていて、それはそれで面白うござんす。が、それにすべてをゆだねるわけにはいきません。たびたび故人の著作が引用されるのは若干わずらわしい。ウィーン・フィルの楽器の独自性のことも、コンツェルト・ザールの音響のことも、入団資格のうるさささも、それはそれですでによく知られていることです。

で、どこに「音と響きのの秘密」があるのか?それを日本人の敏腕音楽プロデューサーである中野さんの知見に基づき、もう少し論じてほしかった。ただの感想ではない、論を期待していた。ご本人がしばしば言及されるように、かの丸山真男門下なんだから。

ついでに、そのウィーン・フィルにして、しばしば起こりうる出来と不出来の秘密も教えてもらいたい。

アメリカという音楽不毛の地にどうしてウィーンでも振れるような一流指揮者がなびくんだろうか。そこんところも教えてもらいたい。万事お金の問題だけなんだろうか。

中野さんはウィーン・フィルがとっても好きなんだ、ということはよーくわかった。好きな気持ちが先行して、全体としてはあちこちからきしみが聞こえそう。



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