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たぶん、もう有名な本なんだろうと思う。 中学受験の塾とかじゃ推薦本に違いない(・・・素数っていつ習うんだっけ?)。 数学の好きな人はみんな揃って偏愛する素数=1とそれ自身しか約数を持たな自然数。私だって知ってはいたが、だからどうなのよ、という以上に関心は持てない数だった。最大の素数が見つかったなどといわれても、天井にネズミが見つかったというほどにも驚けない程度の無関心さである。 たぶん、それはいかにも理屈だけの、実感できない世界として「素数」を教えられていたからだ。 『素数ゼミの謎』はほんの間違いで買った本である。ネットで買った。開いてみてびっくり、「なに、これ?総ルビ、しかも見開き挿絵!」ところが読んでもう一度びっくり。だって、すごく面白かったのだもの。 アメリカで13年おきとか17年おきに発生する周期ゼミについて、どうしてそんな変な発生をするのか、という謎解きなのだ。それに素数の性質が関係してくる。なるほど〜っ! 確かに素数って性質も大いに意味があるんだ、と恥ずかしながら、初めて納得 and 感動。こういうことに大きく心を動かされると、数学を専攻しようなんて思うのね、きっと。残念ながら、it's too late for me. 挿絵も全然無駄ではなく、ビジュアルに直感させてくれる。まっこと、うまくできた本だと思って読み終えた。(読み終えた、というほど時間がかかる本でもない。)数学科予定の息子なんぞは『博士の愛した数式』ほど胡散くさくなくていい、という。あれは数学の弄びなんだそうだ・・・そうかね? 私は算数の問題はキライであった。「A子さんが財布になんぼか入れて、お使いにいく、あそこで100円、ここで230円、と使い、さて、財布を見ると450円残っていた。最初にいくら持って出たか」という類の人の財布の中身を推察するようなことのどこが面白いのか。発想にまるで品がない。A子さんの財布はA子さん自身が面倒をみればよろしい。しかも、これがむずかしくなると、やれ、最初に持って出た額の何分の1が残った、などといいだし、線分図を描いて解くことになる。そんなアホなことをやるために、算数がいるのか、と呆れるしかない。 長年の恨みなので、もう一つ書く。高校の順列組み合わせである。ボートに人が乗り分ける類の問題や、旅館の部屋割りの問題。デブとデブは当然並ばないし、仲良し同士はひっつくし、いびきのひどい奴らはそれで一部屋である。なんでわざわざ理屈をつけて、PだのCだのと式を書いて、不要な数字をはじき出さねばならないのか。 数学教育の人は、単純に現実をひっぱってくることが親しみをもたせる手段だと勘違いしているに違いない。あんなん、やったって、何のために?と疑問が増大するだけだ。現実には計算する必要もなく決まることなんだから。 そこへ行くと、この『素数ゼミの謎』は整数の性質を考えることについて「心なき身にもあはれはしられけり」であった。こういう本を中高生に読んでもらわなくっちゃ。それから数学なんて、と思っている大人にも。
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