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こんなものがあったのですね。 先日来、講談社の『日本の歴史17 成熟する江戸』というのを読んでいて、その中で紹介されているのが文化年間の絵巻『煕代勝覧』でした。まずこの日本史の本自体がとても面白く読める記述 ― 事実羅列に終わらない、さりとて、無責任な想像の世界ではない ―で書かれていて、達者なもんだなあ、と感心していました。『煕代勝覧』は割と最初に丁寧に紹介され、読者に<成熟する江戸>のイメージを与えてくれるのです。 日本橋通りの店や街を歩く人たちが細々と描かれ、とても面白そうです。 一度現物が見たいな、と思っていたら、なんと偶然、今週一杯は日本橋の三井記念美術館で公開中だと知り、あわてて飛んでいって見てきました。目下の所有者はドイツのベルリン国立東洋美術館だそうですが、里帰り公開にこれほど適した場所があるでしょうか。日本橋室町2丁目の三井本館ですもん。 平日の午前中だし、空いているだろうという期待は見事に裏切られ、おばさま、おばあさま、おじいさまで混んでいました。三越お帳場カードの人ばかりじゃないの、といいたいような立派な客筋です。平均年齢65歳は堅いかな。 日本橋界隈に詳しい人たちが多く、聞こえてくるおしゃべりは、あれは今の××だね、だの、戦争前まであの店はあった、だの、私の母がひいきにしていた、だのと、江戸と東京がいっぺんでつながるような楽しい声ばかり。若干やかましいことと、絵巻の途中で足が止まってしまうことを除けば、こんなに楽しんで眺める人たちに見てもらえてよかったね、と絵巻に語り掛けたいくらいのいいお客さんです。fine artとしての価値はさほどでもないのでしょうし、ドイツで広げてみてもディテールはまず理解してもらえないのですから、本当にここで公開されてよかったと思います。(以前、江戸博でも公開したんだそうですが。) 絵巻そのものは非常に保存がよく(まあ19世紀のものですから)きれいですし、ひとこま、ひとこま、生き生きしていて、喧騒が聞こえてきそうです。屏風と違って、細部も見やすいし、ホント、会期に間に合ってラッキーでした。 この展示は『日本橋絵巻』と題するもので、図録も出ていますが、私のお勧めは小学館アートセレクションシリーズの『活気にあふれた江戸の町『煕代勝覧』の日本橋』です。見飽きません。あ、最初に出した講談社の『日本の歴史17 成熟する江戸』もいいですよ。経済史もこういう形でなら親しみやすく、納得がいきます。
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