Blue tears...小雪

 

 

嵐の金曜日。 - 2004年11月26日(金)

荒れた夜だった。

この夜このまま死んじゃってもいいって本気で思った。

夫に罵声を飛ばし心も行動も制御不能な状態に。
夫もああいえばこう言う性格。小波から大波そして津波的言葉の連射攻撃。
夜中のマンションに二人の下品な大声と罵声が響いた。
キレテル間はそんな事気にしちゃいなかったが…
ていうか、気にしながら喧嘩出来きたら凄いし。ありえない。

私がした事?
徹底的に夫へ罵声を飛ばしその夜食べるつもりだった煮込みうどんの鍋を
コンロから流しへ鍋ごと全部ひっくり返した。
思いっきり投げた鍋からは汁が飛び散り床にも散乱していた。
だけどそんな事どうだってよかったし、むしろ全ての食器さえ砕き割りたい気分だった。


「終わりだよ。これで君も楽な生活が送れるでしょ」
「勝手なんだよ。そこまで激高するって鬱云々より性格に問題有りだろ?」
「はいはい。そうかもね。とっくに歪みまくってるよ。だからここを出る。半コ押して離婚届は送るよ」
私は急いで取り合えずの化粧と身支度をしながら夫を見ずに言い放ってた。
もちろん一番の荷物は「薬」
飲んで海に入る。それしか頭に無かった。

「こんな時間行く所無いだろ?」
「いくらだってある。ビジネスホテルに泊るからほっといて」
「俺はもう冷静だよ。君も大人になれよ」
「は?私だってもう全然冷静だけど?だけどアンタと一緒にいたくないだけ」


鞄を取り上げられたりで狭い玄関で冷静を主張する二人は急に世間体を気にし小声でこぜり合っていた。
下らない大人だ。どちらも。

結局振り切るように家を飛び出した。夜中12時半過ぎ。
通り過ぎるタクシーを横目にただただ歩いてた。
次のに乗ろうと思いながら何台も何台も見送った。
捕まえて飛び乗るのは簡単だ。
だけどこんな時間に海まで運んでくれって言える?しかも女ひとり。
死ぬ気で飛び出したのに行動に移せない。とことん弱虫だね、私。
意識的に?タクシーを逃したまま目に入って来たファミレスに吸い込まれるように入った。

多分浮いてただろう。金曜の夜中に独りで来る女っていないもんね。
食欲も無かったけどパンケーキとドリンクバーのセットを。
見渡すと店内には女性の二人。男性の仕事帰り風の二人。オヤジが独り。そして私。

パンケーキをむさぼりながら先がない現実に途方にくれていた。
死んだら?…
今は実家も兄貴の事で命一杯。とんでもなく大迷惑だろう。
いつもそうだった。兄には振り回されっぱなしの家庭だった。
欲しい物は何でも手に入れ。気分屋のあいつの言葉で何度心が傷ついたか。
兄は家族でこの世で一番のエゴイストだ。
なのに白血病。急性転換で緊急入院。肺炎併発?先々週からの重態で連日両親や私も面会の日々。
肺炎は奇跡的にも回復したが、ありえないほど痩せてしまった。
このまま死んでいくのだろうか?誰もが兄の未来は明るくない事をどこかで悟っている。
看病と枯れてく兄に悲嘆にくれる両親の涙が頭の中蘇る…

タイミング悪すぎ。
今夜死んだら親不幸にも程があるってものだ。役にも立てず迷惑だらけ。
死ねない自由が私の命をとりあえず救った。

深夜2時。
私の心も枯れていた。
誰にも分かってもらえないまま外の闇より心に重い闇を抱えたまま
小雨に濡れながら夜道を歩き自宅へ舞い戻った。
情けないけどここしか今の自分の場所は無い。
横になれる布団があるだけ幸せか?…

だけど…だけど…心の居場所が無い。独りぼっち。

今年、11月最後の金曜。暖冬とは裏腹に心は最高に寒い夜だった。



小雪。










...




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