ことばとこたまてばこ
DiaryINDEXpastwill


2004年12月14日(火) 墨を血に換えて

下着一枚もつけぬ、あられもない姿で君は幼子を掻き抱き、
その子の頭髪に墨を含ませ地面に絵を描く。
出来上がる絵は至極下手であり、芸術には到底及びもつかなかった。


けれど描いている君は美しかったね。
あんまりにも、全身全霊をかけていっしょけんめで、
ほんと美しかった。何かもはや崇高な。

社会には認められずとも
人には認められずとも
君の美しかった姿を知っている私がいると。

紛いもなく
疑いようもなく
君は美しかった。

紛いもなく
疑いようもなく
君は美しかったんだ。


そして私は現在、君以上に打ちのめされているのだよと
言ったら君は信じるかな?


あまりにも美しい君がまぶたに
こびりつき、焼きつき、焦げつき、
手のほどこす余地はありえなく。


我は一体何をしてんど?と。
我は一体何を怠けているの?と。
我は一体何を知っているの?と。
我は一体何をしたいの?と。
我は一体何を知っていたの?と。


社会にも人にも誰にも認められぬ君は
現在地球上に今確かに生きている野郎にそう思わせたのだよ。

墨を含ませた髪から血のように流れる墨を顔面中にたたえたる幼子がそう言いました。


陽 |HomePage

My追加