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男の子は不思議だ。 M、T、K君はクラスメート。その日は何故か我が家に集合していた。 いや、何故かではない。理由は明白「ピクミン2」と携帯ゲーム機。 コントローラーや本体を引っ張り合いながらも、まあ何となく仲良く遊ぶ、 息子以外は 随分としっかりしている、自転車だって巧い。 生まれ月を聞いてみると5月が2人、8月が1人。8月生まれの子は下に 2人の弟が居る。変則家庭に育った2月生まれの一人っ子の息子。 他の子には 弟のように相手にして貰っている。 とは言え どの子も1年生。大雑把に見れば然程変わる事もないんだろう。
私が取って置いたじゃがりこをむしゃむしゃ食べているK君。無論うちの母が 「食べていいよ」と言ったから食べている訳であるが。 半分残っていたじゃがりこを完食し、もう一つあるのを見付けてしまった。 私は他の子とゲームの夢中で、おやつが食べ尽くされていることに不覚にも 気が付かなかった。5時解散。遊び始めが3時半頃だから1時間半ほどか。 2時過ぎまで学校にいたんだから、子供は元気だね全く。 K君は食べ残しのじゃがりこを家に持って帰ろうと思ったらしい。 彼の家は、我が家から50mと離れていないのだ。 ところが、遊び止めた他の子が一斉に言った。「オレにもじゃがりこ」 言うが早いか、全員がK君に飛び付いた。息子も混じっている。 「あんた達、ちょっともうご飯なんだから。ちゃんと食べなよ、ご飯もねっ」 リスのような微妙なほっぺで 一応は頷く子供達。 K君も、取られてなるかと慌てて口に突っ込んでいた。1個のじゃがりこの 容れ物に、4つの小さい手が殺到する。まるで握手をしているみたいだ。 同じ釜の飯と言う言葉を思い出した。彼らは とても楽しそうだった。 他にもお菓子はあるのだが、一人のお菓子に全員で手を突っ込むのが良いの だろう。「今日は 一緒に遊んだよな〜」 同じ物を食う事で、総仕上げとでも しているんだろうか。 食べながら玄関になだれ込み、彼らは引き上げて行った。一緒に飛び出して 行った息子を引き摺り戻す。 後で見てみるとじゃがりこの空の容れ物が一つ、玄関に残っていた。
女の子も面白い。 参観日で、息子の隣りに座るR子ちゃんが「おばさん、誰のお母さん?」 と訊ねて来た。「R子ちゃんの隣りの Rのお母さんだよ」 途端にR子ちゃんの眉が吊り上る。怒っているのだ。 「あのねえ、Rちゃん私の事『R子ババア』って言うんだよっ」 おやおや、Rは家では 今日はR子ちゃんに2発叩かれたなどと言っている。 怒らせて仕返しを食らっているらしい。息子は家ではババアとは使わない。 使ったら大変な事になるからだが、外では使っているらしい。 しかも気になる相手に。 R子ちゃんに内緒話をする。彼女は内緒の話に興味津々の様子だ。 「RはR子ちゃんの事が好きなんだって。だから 恥ずかしいから わざとやっちゃうと思う。家ではR子ちゃんが好きだって言ってる」 「本当?」 本当。嘘は言いません。 「でもおばさんが この話をした事は 内緒にしてね」 「どうして??」 「おばさんが、Rに叱られるから。R子ちゃんが好きなのは内緒だから」 「判った。絶対内緒にする!」 秘密を持った事がとても嬉しかったのか、R子ちゃんは大人びた口調で 「おばさん、この服可愛いねえ、どこで買ったの?」と訊ねて来た。 それこそ可愛い服を着て、可愛い髪飾りを付けていた。
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