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春の空はそんなに高くない。 だけど この季節の空が 私には一年のうちで一番、遠く思える。 何故だろう? 何かに手を伸ばして見ようかな などと言う気持ちに なるからだろうか?
夏になると、それはもう余り思わない。 季節に急かされる様に ただ前に歩いている。北国の夏は短い。 空を見上げる事があっても 雲の高さまでは感じない。 秋の空が一番高いが、その時はもう 諦めている。空が遠いと言う事は 当たり前の事と思えるようになっている。全てが順調である、それなら それで良いのだ、そんな気分になっている。 冬の空は低い。近い筈だが 空は見えない。見ていないのかも知れない。
どの季節でも いざ手を伸ばそうと考えた時、空の遠さを思い知らされる。 それが本当に遠いのだと、身にしみて解る様になったのは おそらく ここ数年の事だ。歳を取った、そう言う事なのかも知れないな。
こんな話をしてみたかった、あの人が行ってしまったのもこの季節であり 彼女の元を 訪れる際には持参したい両切のピースを 何処で買ったら 良いのかな?などと 私は考えている。
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