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「もう、馬鹿な事したって諦めるしかないね」 「そだね」
母が、買ったばかりの洋服を お店の裏にある銀行のキャッシュカードの 機械の前に 忘れて来てしまったと言う。 気が付いたのは家に戻ってから。遅すぎ。何処にも届いてはおらず 勿論、カード機の前には無し。 ま、当たり前だわねえなどと しれっと思っちゃう自分が何だかむなしい。
お財布2回、忘れた事ある。2回とも見付からなかったのは、まあ財布だし。 ただ、ちょっと考える所はあった。
私にはトイレでバッグの整理をする癖がある、と言うかあった。今はしない。 トイレでちょっとお化粧直しをすると バッグの中の物の配置が変わる。 財布は重要 かつでかぶつなので、一回一回出し易い位置に戻したり していたのだが、その時に忘れちゃうのだ。 1回目、デパートのトイレに忘れた時はさすがに諦めた。 無くしたと判るまで 少し時間が経過していたからだ。 だが2度目はちょっと違った。小洒落たショットバーの便所で無くしたのだが。
同性の友人と 女性ばかりのバーで話に興じていた時、生理現象で私は席を 立った。トイレは広くて綺麗。心行くまで用を足す。 軽く化粧を直し、席に戻って 財布を置いて来てしまった事に気が付いたのは 割と直ぐだった。トイレには一人しか入れない。私が出てから入った人は 一人か多くて二人。直ぐに取って返す。だが財布は消えていた。 この店の中に犯人が居る!状態だ。 だが、華やかな雰囲気の中 着飾って談笑する女性達の他、誰の姿も見られない。 その時の財布には、カードとか、そう言った物とは別な意味で ちょっと 無くしたくない物が入ってた。それで無くす私がまず、悪いんだけど。 その日は一旦家に戻り、後から店に電話をする。 どうせその場で騒いでも、盗る気なら名乗り出る筈もないし、もしも後から お店に届けるつもりで居る人がいたら、嫌な気分をさせてしまうかも知れない からだ。 だが、幾ら待っても財布は戻らない。待って戻るもんじゃないからなあ。 何が腹立つって・・・まあ、いいや。財布は忘れない。忘れたら諦める。
知り合いの男性の彼女が財布を拾ったと言う。中には8万が入っていた。 彼女はその場でお金だけ抜いて、カードと財布を別々の場所に捨てたと言う。 その場に居合わせた人間から聞いた話しだ。その場には2人の男性が居たと言う。 何と言うか 情けない。 それにしても、この話ですごいなと思ったのは 彼女は普通の20代頭の 女性としか私には見えなかったが(実際、そうらしいが)どうにも手口が プロであると言う事だ。毎月のローンに 拾ったお金は消えたらしいが 貧すれば鈍すと言う余り宜しくない諺を思い出す一方、貧すれば非常に 頭のある部分が 鋭敏になるのだなあと感心した。
8万。私が落としたお金は、2個の財布を合わせてもそれより少ない。 それとカードだ。捨てるなよ。ああもう、腹が立つなあ。 何て言うか、人のお金で埋めなきゃならん生活は やっぱり駄目だよなあ。
鍵でも、財布でも拾ったら届けようっ。ハンカチでも届けよう☆ だってさ、不注意と思いつつも 探している人が きっと居るんだから。
諦めたって言いながら、今回の服も、一応探したもん。手を尽くして。
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