目次 / 戻る / 進む
2006年06月22日(木) |
おばさんは、君がきらいだ。 |
これは実際、小学2年生の子を前にしての私の発言だ。 もちろん前後があるけれど。
ヨッチャン(仮名)は名前を変え、何度かこの日記に登場している。 幼稚園からずっと一緒で、息子とは今年で4年目だ。
いつも居場所を探し、彷徨っているヨッチャン。 卒園した幼稚園付近を7時過ぎても自転車で延々と周回しているので 昨年は先生方も随分心配されていたと聞いた。 彼の言い分が本当であるならば、お姉ちゃんがカギを持って行って しまったら、家には入れないのだと言う。 可哀相だ、だが事実である可能性は低い。 ヨッチャンの嘘は巧妙だ。小学1年生が吐く嘘とは思えない、いや ちょっと思いたくない巧妙な嘘を吐いていた。
突然雪の中に仲間を押し倒し、腹を殴る。あとで問い詰められると 一緒にいた別の子に「命令されてやった」と言う。 それだけならまだしも 「ごめんなさい、ボクが悪い事だって判ってるから止めれば良かったんだ でも逆らえなくて、ボクもちょっとだけ足を蹴りました」 などと言う。 彼が犯人と名指しした男の子は、ヨッチャンの現在の 出入り先の家主の息子だったりする。 恩義も減った暮れもあったもんじゃない。
ヨッチャンは2年生になってパワーアップした。 何か悪さをした際に、うちの息子が「お母さんに、言う?」と先生に 恐る恐る訊ねてしまったのだ。これは先生から聞いた。 「お母さんに言わないなら止めるってかい!って言うと『ちが〜う』って 言ってたんですけどね」 先生は笑っておられたが、どうやら発端はここであったらしい。
ヨッチャンは我が家に来て、息子の悪行をあげつらって行く。 昨日は、牛乳パックを開いた時、過ってヨッチャンの服に少しかけて しまったと言うものだった。近所のクラスメートの女の子がたまたま 事情を知って、我が家の玄関口でヨッチャンの言っている事が誇張と 嘘である事、全てが既に済んでいる事を激しく暴き立ててくれた。 頼もしい事だ。 ヨッチャンは初めに息子の落ち度を告発した時にこう言った。 「だから、今日は遊べますか?」 息子の弱みを握れば、断れないと踏まれてしまったのだろう。
今日はインターホンに息子が出たが、いきなり 「Rちゃんのお母さん出して!」と言われて、息子は何を言われるかと すっかり縮み上がってしまった。
私が出て行って、およそ15分の会見が持たれた。 彼が家に入り込みたいのは判っているので、玄関を閉め外に仁王立ちになる。 「Rちゃんが・・・Rちゃんが・・・Rちゃんが・・・」 喧嘩をした、ひどい事をした、意地悪をした。クラスが困ってる。 私の方からは、友達に怪我をさせるから、余り蹴ったりしてはいけないよ。 などと無難なお説教をする。
ヨッチャンにとっては想定外と言うか、直ぐに自分の非を認め息子を 叱り、ヨッチャンに居場所を提供するものだろうと思っていたらしいが そうならなかったのが不満だったらしい。 何度も「もう帰りなさいね」と言っても一歩も動かず、目も全く泳がない。 挑むように、ずっとこっちを見詰め続けている。小学2年生なのに。 「だけどね〜Rちゃんはね〜」
「ヨッチャン、嘘を吐いたね?」 「へ?」 「冬の日に、K君が命令して腹を蹴った、自分はちょっとだけ蹴ったって 言ったよね?だけどおばさんは、それは嘘だって知ってるよ。 おばさんは嘘は一番嫌いなの。嘘吐きは大嫌いだからRは嘘は吐かない 筈だよ。友達をこっそり内緒で悪者にするのは一番卑怯。 おばさんはね、そんな事をする子供は嫌いなの、帰りなさい」
多分、私の目には火が宿っていたと思うのだが・・・ それでやっとヨッチャンは今日帰ったのだった。
事実ではあるが、子供に言うのはどうかと思う事も言ったので 即刻学校に電話して、担任の先生(20歳)に自分の口から出た言葉も なるべく事実通り伝えた。
意外な事には、学校内の事情が外へ子供の口によって漏れ出た事に 先生は大立腹の様子だった。 息子が私を怖がっていると言う話はこの時先生との会話で聞いたのだ。
だがこれも、言い訳に聞こえるかも知れないのだが、私が怖いと言う よりも、母一人子一人であるので、傷付いたり、泣いたりする母を 息子は一番見たくないらしいのだ。 そしてそれを割と簡単に、子供絡みで私はやってしまうのだった。
ええい、くそ! 息子は不安定になっている。
|