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学習発表会が無事終わった。
台本自体持って帰ってきたっけ?って感じなのでストーリーは実は 当日まで良く知らなかった。
月夜の森で
夜な夜な背広来たおっさんと、エプロンにバンダナのおばさんが 宴会をするので、怒った魔法使いが彼らを石にかえると言う・・・そんな話で。
大人役は背の大きな子から選ばれているようだ。日頃から大柄だなと 思っていた子は割とここにいた。
昔の話だが・・・ 私の弟はとにかく小柄な子だった。 小さく痩せていて、多分そのためだろう。学芸会の劇で2度も良い役を 掴んでいるのである。
赤いろうそくと言う話に出て来る「サル」(主役)
裸の王様の、子供役(微妙に目立つ役)
弟は裸の王様の時、自分の手を引いた母親役の同級生の名前をまだ 憶えており、この季節になると「ヒロセか、あいつ でかかったんだよ」 と ぽつんと言うのである。
魔法使いが登場した。一気に10人くらい。多いよ、仕方ないけど。 息子がどれかは、直ぐに判った。 いつアレを言うのだろう。
「ごま゛っだな゛ぁ゛」 出た!
だけど他の子は普通にセリフを言っているぞ? そんなに力を入れなくても いいと思うのだが。 まあ、いいや。もはや過ぎた事だ。
そのあとはホウキ(彼らの自作)を使った簡単なトワリングを見せてくれた。 家では一度も練習していなかったので、全部学校でやっていたらしいが 何となく、こちらが出来ないんだろうと思っていた事を難なくこなして いる子供の姿をみるのは 感慨深いものがある。
魔法使い退場。 親を石にされた子供達役は子供なだけにやっぱり小柄な子が集められている。 彼らは鳥(女の子)樹(大き目の子)風(側転の出来る子らしい)などとの やり取りと冒険のあと、ついに魔法使いの元へ辿り着く。
「ねえ、Rがいないんじゃない??」 隣に座った母が聞いてきた。
良く見ると、舞台下には他の子にあわせて何かを一生懸命歌っている やっぱり魔法使いの衣装を着た一団が。 その中に息子がいた。
「これ、さっきの魔法使いと違う子供達なんだ」
一体何人いるんだよ魔法使い・・・仕方ないけど。 あとで考えてみると、子供役も場面が変わるたび変わっていたような・・・ おそらく魔法使いと子供役だけで40人はいると思った。
出番のない子供達は舞台のしたでずっと歌っている。 かなりの曲の数であり、声もまだ綺麗で、上手上手と思っていると 息子の顔がおもむろにこっちを向いている。 他の子はみんな前を見ているのに。 どうやら発見されたらしい。 授業参観ではないので、正面を見ろ!と合図を送るわけにも行かず そのままにしておく事にする。
2年生退場、3年生の入場。斜向かいのT君と目があって、彼が手を振って くれたので、私も降りかえした。こちらが体育館を出る時には入れ替わりで 観覧となるT君のご両親と会った。
帰り道、先に親御さんが帰ってしまった女の子と息子、両方とも黒い 自作の帽子を被り、劇中のセリフを大声で言い合いながら歩いて行く。
その後ろを私と母がゆっくり付いて歩いた。
彼らはジグザグと、川の堤防に登り、降り、離れ、示し合わせたように 動く。それでお互いが満足なようであった。こちらは振り返らず 熱心に 憑かれたように魔法使いになりきって、行く。
子供の成長と言う物語の一場面を、思ったよりは寒くならなかった 冬枯れの道で 黙って目で追っていた。
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