深夜に高校時代の友人Oと電話で長話をした。
Oは今東京に住んでいる。東京の会社に就職したので引っ越したわけだが、一人暮らしではなく祖母と同居している。
Oは小学校時代におれの地元I県に引越してきたが、もともとは東京の人間なので、親族は東京の方が多いのだろう。
東京に行きたいと前から言っていたので、念願叶ってハッピーにしているかと思えば、そうでもないらしい。
祖母と同居、となると、やはりいろんな問題があるようだ。
「ばあちゃんがこんなに頑固だとは思わなかった」とOは言う。
Oの言うことは詳しく聞かなくてもよくわかる。
ばあちゃんという人種は、案外と口やかましいものなのだ。
人間、年をとると、だんだん考え方が固まってくる。 あれはいい、これはだめ、と完全に自分の中で決まってしまっているから、 他人のやることへの許容範囲が狭くなる。
いかに自分の孫といえど、気に入らないものは気に入らない。
そういうふうになぜかなっていくものだ。
会話の最中、今は演劇をやっている共通の高校時代の友人Tのことが話題に上った。Tも東京に住んでいるが、Oはそのことを知らなかった。
「Tはどこに住んでいるの?」というOの問いかけに、どこそこらへん、とおれが答えると、Oから意外な話が
「え?それおれんちから自転車で10分くらいのとこだよ」
自転車で10分。なぜか、OとTとの家の距離は、高校時代のときより近くなっている。
二人でそのことを笑ったが、そんなに家が近いTとOは高校卒業以来会っておらず、逆におれとTは(東京都とI県という距離を考えれば)よく会うようになっていたという事実には、何だか言いようのない不思議さを感じた。
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