銀河鉄道を待ちながら
鬱と付き合いながらの日々を徒然に

2007年01月10日(水) 僕とウリとウリエル

僕の家には、フェレットが二匹いる。

名前はソラとウリ。

ソラは賢くて思慮深く、ウリはおバカさんだが優しい性格だ。

僕は一人暮らし。

僕の彼女は仕事が終わった後、毎日アパートに来てくれるが、平日の日中、僕は一人ぼっちだ。

そんな僕の寂しさを、ソラとウリは癒してくれる。

賢くて温かく、遊び相手になってくれる哺乳類のペットは、本当にかわいい。まるで家族のように思えてくる。


ソラとウリはそんな存在だったが、ウリは去年の年末辺りから体調を崩していた。

元気がなく、食欲も減り、おしっこもウンチもトイレでできなくなっていた。

もともとトイレがうまくない子ではあったが、フェレットが自分の寝場所であるハンモックの上でおしっこやウンチを漏らしてしまうというのは、フェレットを飼っている人なら誰しも知っていることだが、普通ありえないことで、それだけ調子が悪いことを意味している。

実は、その前から、ウリの体には異変が起きていた。
飼ってからしばらくすると、下半身麻痺のような状態に陥ってしまっていたのだ。

獣医に見てもらったが、その原因は分からなかった。
レントゲンも撮ってもらったが、骨に異常は見当たらなかった。


今日、僕は夕方頃、急に眠くなって布団で寝ていた。

彼女がアパートに帰ってきた音で、やっと起きたという状態だった。

起きた頃には、もう午後七時を回っていたと思う。

起きた後もしばらく僕は、布団の中で横になっていた。

すると、隣室から彼女の声がした。

「ねえ、ウリがおかしいよ」

僕はぎこちなくなっている体を動かし、ウリのいる部屋に行った。

彼女はウリをゲージから出し、腕に抱いていた。

僕はウリを彼女から受け取った。

ウリを触った瞬間、僕はまずいと思った。ウリの体は冷えていた。体温が下がっていたのだ。そして、呼吸も浅く早く、ぜいぜいと喘いでいるかのようだった。

目に元気がなく、だらりとしている。

獣医に診せようと思ったが、もう動物病院はどこも閉まっていた。

僕はなるべく体温を上げるために、ウリに厚手のタオルを被せ、ハンモックに戻した。

獣医には明日すぐに診せに行こうと思った。

彼女との食事を済ませ、彼女が帰った頃にはもう午前0時近くになっていた。

ウリの状態は一向によくなる気配を見せない。

心配だったが、どうすることもできない。

僕には見守ることしかできなかった。

僕はフェレットたちがいる部屋の事務机の椅子に座ってウリを観察していたのだが、急に眠気が襲ってきて、気が付くと眠ってしまっていた。

起きたのは午前2時30分ころだったろうか。

ウリの様子を見ると、もうウリはピクリとも動かなくなっていた。

僕はゲージからウリを出して、いつもしているように、ウリを胸に抱いた。

低かった体温がますます低くなっていて、ひやりとした。

目は半眼になっていたので、そっと閉じてやった。

眠るように逝ったのだろうか。目を閉じてやると、ただ眠っているようにしか見えない。

僕はウリの死に直面して、しばらくの間、ただ呆けたように椅子に座ってウリを抱いていた。

生命の入っていないウリの体を、生前と同じようにあれこれと動かしてみた。ウリは体温が低いだけで、いつもと変わらないように見えた。

でも、死んでしまったことは事実なのだ。

受け入れがたい現実だったが、受け入れて、やるべきことをやらなければならなかった。

もう随分と夜遅くなってしまっていたが、彼女に一報し、ウリの体は袋に入れて外にある倉庫へとしまった。

倉庫へとしまうのは可哀相だったが、保存のことを考えると仕方がなかった。翌日、どこか良い場所に埋めてやろうと思っていた。


後になって思えば、もっと頻繁に獣医に見てもらえばよかったとか、もう少し丁寧に観察すべきだったとか、いろいろな後悔が脳裏をよぎったが、もう後の祭りだ。

ウリには申し訳なかったと思う。


そもそも、名前がいけなかったとも思った。

ウリは、別に体型が瓜に似ていたから、とうわけではなく、熾天使ウリエルから採ったものだった。

天使の名前を付けてしまったために、神の下に早く呼ばれてしまったのだろうか。それとも、ウリエルという大天使の名前を勝手に使ったために、神の怒りを買ってしまったのだろうか……。

どちらにせよ、ウリは旅立ってしまった。

もう一緒に遊ぶことも抱っこすることもできない。

ウリは幸せだっただろうか……?
僕のことを恨んでいるだろうか……?

幽霊になってウリが僕の前に現れたら、僕はまず「ごめんね」と言いたいと思った。


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